■導入事例■【JR九州様】手書き・図表対応RAG×ノーコード開発で、現場と共に進化を目指す全社的な生成AI活用とは

■導入事例■【JR九州様】手書き・図表対応RAG×ノーコード開発で、現場と共に進化を目指す全社的な生成AI活用とは
写真右から:九州旅客鉄道株式会社 総合企画本部デジタル変革推進部 主査 姫野様、同総合企画本部デジタル変革推進部 課長代理 東村様、同 総合企画本部デジタル変革推進部 江川様、Allganize Japan株式会社 Customer Success Team Specialist 久保、同Account ExecutiveTeam Expert 田村(※所属・肩書は取材当時の情報)

九州旅客鉄道株式会社(JR九州)様は、1987年に発足し、創業以来、まちと人をつなぐ企業として、鉄道事業を中心に多岐にわたる挑戦を続けています。

JR九州グループ中期経営計画2025-2027では「デジタルの力で、まちを、お客さまを、社員を、元気に」を掲げ、重点戦略を支える経営基盤に「DX活用範囲の拡大と深堀り」を掲げています。その取り組みの一環として、全社的な生成AI活用を目指しており、活用環境の整備に努めています。その1つとして、Allganizeの「Alli LLM App Market」を活用しています。

今回は、JR九州様の生成AI活用推進の中核を担う、総合企画本部 デジタル変革推進部の皆様に生成AI導入の背景、検討のポイント、実際の活用業務や期待する導入効果、今後の展望についてお話しを伺いました。

ー 皆様の部署や役割についてお教えください。

東村様:当社は九州での鉄道事業を核に、不動産やホテル、流通など様々な事業を展開しています。私たちはデジタル変革推進部のAI・データ活用チームに所属し、各部署やグループ会社が抱える課題に応じてデータや生成AIの視点から整理し、具体的な解決策を提示しています。また、生成AIの導入検証や環境整備、利用促進も担っています。

江川様:当社ではデジタル活用において、社員の主体的な行動を重視しています。私たちのほかにも、鉄道事業や不動産事業などに携わる部署にデジタル担当を配置し、各部門が抱える課題を拾い上げてユースケース化し、施策へ反映できるよう取り組んでいます。

姫野様:当社では2021年10月にデータ分析プロジェクトを発足させ、私たちが現場に出向いて課題を掘り起こすところから取り組みをスタートしました。現在では、「データを活用して課題を解決したい」といった相談が各部署から積極的に上がるようになり、業務効率化や生成AI活用のアイデアも増えています。  

内製RAGから始まった挑戦。活用が広がる中で浮かび上がった「3つの壁」

ー 生成AIの活用を検討された背景をお聞かせください。

東村様:ChatGPTが注目され始めた2023年から生成AIの動向を追い、2023年5月には活用ガイドラインを策定しました。2024年以降、LLMの進化とともにユースケースや活用環境が充実してきたことを受け、当社でもRAGを活用した取り組みを本格化しました。

江川様:汎用的な生成AI環境を整備し、内製でRAG環境も構築していきましたが、活用が広がるにつれて3つの課題が明確になりました。

<導入前の3つの課題>

  1. 社内データにもとづく回答の精度問い合わせ対応のニーズが高い領域から検証を開始しました。検証を進める中で、規程など資料だけでは判断が難しい質問に対して、生成AIが無理に回答を生成する傾向があり、実用面で懸念がありました。
    また、当社では紙資料のデジタル活用が課題となっており、以前から紙資料のデジタル化を進め、過去の手書き資料もスキャンしてPDF化するなどしていました。これらもRAGの検索対象に含まれていましたが、当時の仕組みでは手書きや画像情報を十分に認識できず、期待通りの回答が得られない状況でした。
  2. 業務への拡張性
    AIエージェントなど、より高度な業務活用を視野に入れると、内製ツールでは機能拡張に制約がありました。
  3. 運用負担
    内製ツールの維持・管理にかかる運用負荷が増大し、継続的な展開に課題を感じていました。

ー これまで、社内情報を探したい場合はどのように対応されていたのでしょうか?

姫野様:各部署ごとにファイルストレージ上のフォルダがあり、そこに資料を格納していました。職場単位で情報を探すことは可能でしたが、フォルダ構成は部署ごとに異なり、構造も複雑でした。そのため、特に新人にとっては目的の資料にたどり着くまでの負担が大きい状況でした。

江川様:また、異動のたびに資料の所在や探し方を把握し直す必要がありました。結果として、自分で探すよりもベテラン社員に確認するケースがあるなど、情報検索が属人的になる部分もありました。

九州旅客鉄道株式会社 総合企画本部デジタル変革推進部 課長代理 東村 将志様

JR九州が評価した“全社基盤”としての生成AI活用「4つの条件」とは

ー 導入の決め手や、Alli LLM App Marketを選んだポイントをお教えください。

姫野様:複数の生成AI開発プラットフォームを比較検討した結果、当時の当社の要件や運用体制を踏まえると、Alli LLM App Marketの適合度が高いと判断しました。Alli LLM App Marketを評価したポイントは、主に次の4点です。

<評価の4つのポイント>

  1. 手書き書類に対応できるRAG精度
  2. 全社展開に適した料金体系
  3. 迅速な生成AIアプリ作成
  4. 将来的な拡張性

1. 手書き書類に対応できるRAG精度

画像を含む文書や手書き資料からも回答できる点を評価しました。当社では、紙資料をスキャンしたPDFデータが多数存在しており、中には、図版に手書きメモが記載されている資料もあることから、従来のRAGの仕組みでは十分に対応できていませんでした。
Alli LLM App MarketはAI-OCR機能を備えており、図表や手書き資料からも回答を生成できるなど、過去の情報資産を利活用できる点を評価しました。

2. 全社展開に適した料金体系

全社利用を視野に入れた場合、ユーザーライセンス型ではコスト増の懸念がありました。そのため、Alli LLM App Marketのユーザー数に依存しない料金体系を評価しました。

3. 迅速な生成AIアプリ作成

Alli LLM App Marketには、100以上の生成AIアプリやAIエージェントが用意されており、社員が必要とするアプリをマーケットから選ぶ感覚ですぐに試せます。また、ノーコードでアプリを構築できるため、各部署が主体的に活用を進められる環境が整っている点を評価しました。 

4. 将来的な拡張性

単なるチャットツールにとどまらず、自律型AIエージェントの構築や業務フローへの組み込みが将来的に可能である点やBoxをはじめとする既存システムとAPI連携・コネクタ連携できること、複数のLLMをシームレスに利用できる点を評価しています。

 

九州旅客鉄道株式会社 総合企画本部デジタル変革推進部 主査 姫野 晋之介様

ナレッジ検索から接遇品質の向上まで。業務に組み込まれる生成AIアプリ

ー 現在、生成AIを活用している業務や、作成されたアプリについてお教えください。

東村様:最も身近な活用例は、社内規程や各種マニュアルの検索です。運行管理、工務、車両関連などのマニュアル類をソースとして、生成AIが自動で応答するため、膨大な資料の中から必要な情報を探す負担の軽減が期待されています。
お客さま対応では、Excelで管理しているQ&Aデータから関連事例を抽出し、回答テンプレートを生成する仕組みを検討しています。

江川様:そのほか、音声文字起こしを活用した『議事録作成アプリ』や、『プレスリリースの想定問答作成アプリ』など、多様な業務を支援するアプリ展開を試みています。

姫野様:より専門的な活用例としては、『RPAのエラー確認アプリ』があります。RPAの仕様書や過去履歴、エラーコード一覧をRAGに組み込み、「このエラーにはこの対処」といった情報を担当者が確認できる仕組みを構築中です。

江川様:現場密着型のユニークな取り組みとして、開発中の『社員の笑顔度を測定するアプリ』もあります。特急列車の客室乗務員など、お客さまと接する社員の表情を生成AIで評価するもので、写真をアップロードすると社内基準に基づいて笑顔レベルを判定することができないかと考えています。

東村様:接遇のように、お客さま満足に直結するものの、定量評価が難しい領域が存在します。事業を多角的に展開する当社だからこそ、生成AIを活用できるシーンも多様です。定量評価が難しい領域に道を開く取り組みとして、担当部署と一体となり検討を進めています。

ナレッジやノウハウが属人性から組織知へ。意思決定の質を支える生成AI基盤として浸透

ー 導入後の社内の変化や、評判はいかがでしょうか?

東村様:生成AIについては、数値的な効果以上に、業務への自然な浸透と使いやすさを重視しています。社内展開を進めている中で、「働きやすくなった」「有識者が不在でも情報を確認できるようになった」といった声も聞くようになり、さらなる効果を期待しています。

姫野様:社内ナレッジ検索を例に挙げると、従来は部署ごとのフォルダ構造や資料形式を理解しなければ必要な情報にたどり着けませんでしたが、現在は自然言語で横断的に検索することが可能になりました。検索プロセスがシンプルになり、社員が本来注力すべき付加価値の高い業務に集中できる環境が整いつつあります。

江川様:打ち合わせの場でも関連資料や過去事例を確認できるため、経験や記憶に依存しない意思決定や、急ぎの判断が求められる場面でも手元のデバイスで必要な情報を確認し、徐々にですが根拠に基づいた合意形成が行えるようになってきているという声もあります。

東村様:さらに、担当者が生成AIを通じて知識の妥当性をセルフチェックできる環境が整いました。これまで特定のベテラン社員に依存していたナレッジやノウハウを、組織として再現可能な形に移行できないか検討しています。今後は心理的な負担の軽減や、自律的な業務遂行を後押ししていきたいと考えています。

 

九州旅客鉄道株式会社 総合企画本部デジタル変革推進部 主査 江川 和希様

「各部主導型」の開発体制で、現場特有のニーズを反映する。現場自らノーコードで生成AIアプリを作成

ー 生成AI活用を促進し、定着させるために実施した工夫をお教えください。

江川様:当社では、複数の生成AIツールを使い分ける環境を整えています。Alli LLM App Marketで作成した生成AIアプリについては全社ポータルに集約し、社内で利用している他の生成AIサービスも含めて「課題別に使えるアプリ」を明示しています。社員が目的に応じて必要なアプリを選び、利用できる導線を整えました。 

東村様:生成AIを全社インフラとして定着させるため、システム面と組織運用の両面から設計しました。システム面では既存ツールとの親和性を最優先とし、導入時の心理的・作業的ハードルを抑えるために、新たなデータ移行を伴わない形で、社員が使い慣れたBoxと連携させています。

姫野様:現場特有の細かなニーズをタイムリーに反映できるよう、開発体制では「各部主導型」を採用しています。DX推進部署が一括で構築するのではなく、各部署のデジタル担当者が自らアプリを開発・設定できる仕組みです。  

生成AIアプリのテンプレート化で、再現性のある生成AI活用体制を構築

ー 現場をもつ各部署が、自分たちで生成AIアプリを開発しているのでしょうか?

姫野様:はい。その通りです。当社は以前からデータ活用を推進しており、2020年頃から各部署にデジタル担当者を配置しています。ローコードツールの活用も進めており、社員が自らITを業務に取り入れる風土が定着しつつあります。生成AIについても各部署で検討を行い、業務に必要なアプリを部署ごとに自ら開発しています。

江川様:各部署が自走できるよう、デジタル変革推進部として支援体制を整えています。勉強会を開催し、ユースケース共有や操作レクチャーを通じてスキルの底上げを図っています。また、社内チャットツール上に相談窓口を設け、開発で行き詰まった際にフォローできる環境を整え、各部署が安心して挑戦を後押しする環境づくりに努めています。 

ー 生成AIアプリの開発について、各部署の皆さんはすぐに対応できたのでしょうか。

江川様:生成AIのノーコード開発は初めての取り組みであり、導入初期は反応もさまざまでした。Alli LLM App Marketのノーコードビルダーは操作が容易で、編集箇所をハンズオンや勉強会を通じて案内し、理解を深めてもらいました。エンジニアでなくても自らアプリを構築できるため、各部署で同時並行に開発を進められ、推進側としても効率的に進められるのではと感じています。

姫野様:現在公開しているアプリの多くはRAGを活用しています。デジタル変革推進部でテンプレートを用意し、各部署がそれをコピーし、プロンプトやUIを調整する形で専用アプリを展開しています。回答対象の資料も部署・系統別に分類し、対象を絞ることで精度と応答速度の向上を図っています。 

東村様:これまで内製アプリで培ってきた、ITを活用して業務を改善する自主性が、生成AI活用にも活かされています。私たちも、社内イベントの開催などを通じて開発者のモチベーションを高め、全社的な活用を後押ししていきたいと考えています。

優れた成功事例の横展開とAIエージェント化で、業務そのものを変革するDXに挑戦

ー Allganizeのサポートやソリューションに関する感想をお聞かせください。

姫野様:コミュニケーションも円滑で、当社のニーズや問い合わせにもスピード感をもって対応いただいています。新機能の実装も速く、最新LLMもリリース後すぐに検証できる点を評価しています。

江川様:Alli LLM App Marketのヘルプサイトに設置されているRAGチャットボットも活用しています。各部署のデジタル担当者から即答が難しい質問を受けた場合でも、RAGチャットボットを通じて対応策を確認できるため、開発者支援の一助となっています。

ー 最後に、今後の展望をお聞かせください。

江川様:生成AIアプリについては、まずは各部署で自由に開発してもらい、その後に水平展開の仕組みを整える方針です。また、生成AIアプリ開発者についても必要に応じて拡大することを検討しています。

姫野様:活用促進の一環として、年1回実施している社内DXコンテストにも生成AIを組み込む予定です。特徴的な事例をエキシビション形式で共有し、取り組みの可視化と利用者拡大につなげていきます。

東村様:今後は、これまでの成果を土台に、2つの軸で生成AI活用を深化させることを目指します。
1つ目は、水平展開です。現在、各部署が独自の視点で生成AIアプリやユースケースを生み出していることから、これらを全社で共有し、JR九州グループ全体の生成AI活用レベルを向上させていきたいと考えています。
2つ目は、AIエージェントとしての高度な活用です。情報の検索・要約にとどまらず、生成AIが各部署の複雑な業務フローを理解し、自律的にタスクを実行する仕組みの導入を目指します。今後も、生成AIを業務効率化の延長ではなく、業務そのもののあり方を変革するツールとして進化させていきたいと考えています。生成AI基盤については、今後も業務要件や技術動向に応じて、最適な活用ができるよう柔軟な環境を整えていきたいと考えています。

ー 貴重なお話をありがとうございました。

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