■導入事例■【東京メトロ様】お客様満足度向上と業務効率化を両立!鉄道会社初の生成AIチャットボットとオペレーター業務支援、その導入効果と舞台裏

■導入事例■【東京メトロ様】お客様満足度向上と業務効率化を両立!鉄道会社初の生成AIチャットボットとオペレーター業務支援、その導入効果と舞台裏
写真右から:東京地下鉄株式会社 鉄道本部 鉄道統括部 お客様センター 副所長 細渕 大様、同鉄道本部 鉄道統括部 お客様センター 所長 大熊 訓様、同鉄道本部 鉄道統括部 お客様センター 主任 五十嵐 純様、同鉄道本部 鉄道統括部 お客様センター 主任 風間 崇様、Allganize Japan株式会社 Customer Growth Group Senior Manager 利光、同Customer Success Specialist 脇村、同Enterprise Solution Group Senior Manager 池上

東京地下鉄株式会社(以下、「東京メトロ」)は、東京都区部を中心に 9路線 195.0km 180駅 の地下鉄を運営し、7路線で他社と相互直通運転を実施する首都圏の鉄道ネットワークの中核を担う企業であり、一日平均683万人のお客様が利用されています。東京メトログループはグループ理念である「東京を走らせる力」を念頭に、東京に集う人々の生活や、経済活動を支える鉄道を核とした都市・生活創造グループとして、さまざまな事業に取り組んでいらっしゃいます。

東京メトロ様では、2024年11月28日より、鉄道会社として初となる「生成AIを搭載したチャットボット」、お客様センター業務における生成AI活用を開始し、Allganizeの生成AI・AIエージェントプラットフォーム「Alli LLM App Market」を採用いただいております。

Allganize | 【東京メトロ様】鉄道会社初!生成AIを搭載したお客様向けチャットボットのサービスを開始します!合わせて、お客様センター業務にも生成AIの活用を開始します!
Allganize Japan ニュース情報:Nov 28, 2024「【東京メトロ様】鉄道会社初!生成AIを搭載したお客様向けチャットボットのサービスを開始します!合わせて、お客様センター業務にも生成AIの活用を開始します!」

今回は、お客様センターにおいて生成AI活用を推進する皆様に、活用の背景や導入効果などについてお話を伺いました。

ー 皆様のご担当業務についてお教えください。

大熊様:私たちが所属するお客様センターは、当社サービスを利用されるお客様、株主様からいただくお問い合わせやご意見に対し、関係各部の協力を得ながら回答を行っています。調整や改善が必要と思われるものについては、社内共有を図ったうえでお客様サービスの向上に繋げています。受付チャネルとして「電話、お問い合わせフォーム(メール)、FAX、書簡、チャットボット」を開設し、年間約40万件のお問い合わせに対応しています。

東京地下鉄株式会社 鉄道本部 鉄道統括部 お客様センター 所長 大熊様

お客様の利便性向上と、オペレーター経験による個人差の解消に向けて、生成AI活用を検討。

ー お客様センターで、生成AI活用を検討した背景についてお教えください。

風間様:2つの観点で生成AI活用を検討しました。1つめは、お客様向けのチャットボットの回答率を向上させ、お客様満足度の向上とお問い合わせ対応の効率化を両立することです。以前はFAQチャットボットを使用していましたが、回答率やメンテナンスの負荷など、さまざまな課題がありました。

2つめは、お問い合わせフォーム経由のお客様対応をより良くすることです。お問い合わせフォームには、年間約10万件のご質問やご意見が寄せられており、Salesforce CRMで管理しています。フォームでのお問い合わせの場合、各種マニュアルを参照するだけでなく、過去事例も参考にしながらメールでお客様に回答します。膨大な対応ログから過去事例を探す必要があり、オペレーターの経験値によって、検索スピードなどに差が生じていました。

五十嵐様:Salesforceの対応ログはキーワードで検索するため、汎用的な言葉だけで調べてしまうと、大量のメールがヒットしてしまい、それらを一つひとつ調べていくことになります。経験のある人は、「去年の◯月頃に類似のお問い合わせがあったはず。あの時の経緯はこうで・・・」と、自分の記憶を頼りに効果的な検索ワードを設定し、うまく情報を引き出すことができます。こうした経験値の違いによる力量や個人差を埋めたいと考えていました。

細渕様:また、ジョブローテーションの関係で、固定メンバーの他に入れ替わるメンバーもいます。回答文の作成にかかる業務を円滑にし、よりスピード感を意識してお客様に対応するために、経験問わず等しく対応できる環境を作りたいと考えていました。

ー 生成AIを搭載したお客様向けのチャットボットについて、お教えいただけますか?

風間様:当社のWebサイトのトップページに設置しており、24時間365日お客様のお問い合わせに対応可能です。FAQからの回答と、RAGによる回答自動生成の2つの技術でお客様のお問い合わせに対応しています。

五十嵐様:FAQに該当するものがない場合、東京メトロWebサイト内から関連する情報を探し出し、回答根拠とともにわかりやすい回答を自動生成します。また、お忘れ物の照会もチャットボットで受け付けるようにしました。Webフォームに比べて、より自然な流れで情報を入力できる仕組みにしています。

東京メトロ様 Webサイトより(https://www.tokyometro.jp/

ー 生成AIによるお客様へのお問い合わせ対応について、お教えください。

風間様:フォーム経由のお問い合わせの回答支援に、生成AIを導入しました。前述の通り、これまではお客様からのお問い合わせに対し、膨大な対応ログから関連情報を探し、オペレーターが手作業で回答を作成していました。

生成AIの「要約」「分類」「文章作成」機能や、ドキュメントやWebページから回答を自動生成するRAG機能を取り入れ、次のような仕組みを作りました。

<生成AIによる回答支援の仕組み>

  1. フォームに投稿されたお問い合わせ内容を、生成AIが把握(Salesforce連携)
  2. 生成AIがお問い合わせ内容を要約し、約470のカテゴリに分類
  3. 回答に関連する情報を検索し、お客様向けの回答案を自動生成
  4. オペレーターが必要に応じて文章を整えて、責任者と最終確認する
  5. 責任者がメールで回答を返信

大熊様:経験値によって差が生じる、お問い合わせ内容の把握や過去事例の検索をAIでスピーディに行います。最終的にオペレーターと責任者が確認を行ったうえで回答することにより、誤回答を防いでいます。

東京地下鉄株式会社 鉄道本部 鉄道統括部 お客様センター 主任 風間様

ハルシネーションリスク低減や脅迫投稿の自動検知など、公共交通を支える東京メトロならではの仕組みを実現。

ー 今回作成した生成AIアプリで、特に重視した仕組みや工夫した機能はありますか?

風間様:お客様向けのAIチャットボットでは、多くのお客様からのお問い合わせを想定し、FAQの範囲内で回答に導けない場合に生成AIが回答を行う仕組みにし、さらにAIが参照する情報源を限定することで、ハルシネーションリスクを軽減しました。

大熊様:過去の出来事から私たち鉄道事業はテロ行為の標的にもなり得るため、チャットボットに脅迫と思われる投稿があった際、AIが自動判定を行いお客様センター管理権限者宛てに「脅迫メール」として通知する設計を取り入れています。本設計により、限りなくリアルタイムに近い状態で検知することができます。実際に脅迫と考えられる投稿が検知された際には、内容を精査のうえ警視庁を含む関係箇所に情報展開を図り、事件の未然防止に努めています。

細渕様:お問い合わせの回答支援アプリでは、”東京メトロの回答スタイル”を反映させるために、約18,000件の過去のお問い合わせ対応をデータベースにしました。生成AIは問いに対して寄り添った文章を返してくれるので、生成AI特有のお客様に寄り添った表現と、東京メトロの回答スタイルを融合し、当社ならではの自然な回答文面を作成できるようにしました。

東京地下鉄株式会社 鉄道本部 鉄道統括部 お客様センター 副所長 細渕様

ー 導入時、関係社員に周知・定着させるために取り組んだことはありますか?

大熊様:社内の理解を深めるために、当センターのシステム担当者を中心に、在籍する社員すべてにAlli LLM App Marketの概要を周知しました。さらに、駅の職場を統括する社員などに向けて、実際の運用についてオペレーションルームの見学会を行い、実際の対応フローについて紹介しました。

風間様:生成AIによる回答支援アプリに関しては、本格稼働の前にオペレーターの各自のPCから操作してもらい、生成AIが導き出す回答の内容や特性を把握させ、想定していた回答内容との差分を確認するといった機会を設けました。

ー お客様向けのチャットボットやお忘れ物のお問い合わせについて、対外的にどのように案内されたのでしょうか。

五十嵐様:弊社Webサイト、車内広告(紙ポスター、デジタルビジョン)、駅構内ポスターで、お問い合わせチャットボットを刷新したことや、お忘れ物の受付方法を変更したことを案内しました。

お客様向けのチャットボットを周知する車内広告(右:実際の車内掲示の様子)

お客様向けチャットボットの好評価が2倍に向上。さらに、オペレーターの経験に依存しないお客様対応体制を構築。

ー 生成AIの導入後、どのような変化があったのでしょうか。反応や評判などについてお教えください。

大熊様:お客様向けのチャットボットについては、回答に対するお客様の好評価の割合が、従来のチャットボットと比較して約2倍に上昇しました。毎月評価が伸びている状況です。

風間様:チャットボットの運用面も大きく改善しました。以前は使用状況レポートをもとに、回答できなかった質問を整理し、それらに関するFAQを新たに作成して追加し、対応範囲に厚みを持たせる・・・といった地道な作業をしていました。現在は、RAGの仕組みによりWebサイトの情報から回答できるようにしているため、以前のようなFAQの追加対応がなくなりました。また、Alli LLM App Marketに変更したことで、これまで苦労していた類義語登録作業が不要になりました。以前は、例えば「ICカード乗車券」に対して「PASMO」「アイシー」など、想定される類義語を全て登録する必要がありましたが、現在は類義語登録なしで運用できています。チャットボット運用の省力化を実現できました。

五十嵐様:オペレーターのお問い合わせ対応支援業務についても、複数の良い効果を得られています。まず、着任して間もないメンバーから、検索に割いていた時間を圧縮できたという報告を受けています。ジョブローテーションによりお客様センターに転入した社員は、駅業務に従事していた人、事務担当していた人、乗車券類の車内処理や車内検札を行なっていた人など、多様なバックグラウンドを持ち、保有する知識もそれぞれ異なります。

生成AIによる回答支援アプリを使うことで、経験値を問わず素早く適切な情報に辿り着くことができ、RAGにより情報源がわかりやすく提示されるため、役立っています。

東京地下鉄株式会社 鉄道本部 鉄道統括部 お客様センター 主任 五十嵐様

風間様:お問い合わせによっては、複数の情報ソースから複合的に回答する必要がありますが、Alli LLM App Marketは、関連する情報ソースを網羅して回答してくれる点もわかりやすいと感じます。

細渕様:経験豊富なオペレーターも、回答支援アプリを活用しています。お客様からの問い合わせの中には、主語や述語などが省略されていることがあり、お客様からの文字情報だけだと状況や感情を瞬時に判断しづらい場合もあります。生成AIは文脈から情報を補完して対応するので、生成AIを通すことでお客様が伝えたいことが把握しやすくなる場面も多数あるそうです。また、生成AIの方が参照する情報の精度が高い場合もあるようで、対応品質の更なる向上に役立っています

大熊様:生成AIを導入したことで、メンバーの経験差を縮め、応対力の底上げに繋がっています。生成AI活用の話が持ち上がった時に、「後進を育てるためにも是非使いたい」と感じました。実務に慣れ、成長するための時間を短縮することが、会社として非常に重要だと考えていましたので、狙い通りの成果が上がっています。

風間様:他の鉄道会社様も今回の生成AIを活用した取り組みについて興味をお持ちいただいており、関東近辺の鉄道会社との連絡会で、多くの質問をいただいている状況です。

ー Allganizeの対応はいかがでしたか?

風間様:専門アプリの開発を開始から約1年半が経過していますが、担当の利光さんを中心に、常に心強いサポート体制を築いていただき大変感謝しています。自社システムとのシステム連携に起因するトラブルが発生した時には、時間外、休日問わず迅速なサポートをいただきました。

また、定例ミーティングでは、弊社側からの問いに対して、丁寧にわかりやすく説明していただいています。生成AIの発展は日進月歩であることから、今後も変わらぬお付き合いをお願いしたいと考えています。

AIと人のシナジーを最大化し、迅速かつ正確なサポートを提供。次世代のお客様センターを目指す。

ー Alli LLM App Marketを活用した今後の取り組み、お客様センターの今後の展望についてお教えください。

大熊様:今後もAlli LLM App Marketを積極的に活用し、業務効率化とお客様対応の質的向上を両立させる取り組みをさらに進めていきたいと考えます。また、お客様センターの今後の展望として、AIエージェントなども活用しながら、AIによる一次対応とオペレーターによる二次対応を組み合わせることで、迅速かつ正確なサポートを提供し、業務効率を大きく向上させ、お客様対応を次世代型に変革していきたいと考えています。

ー 貴重なお話をありがとうございました。

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