■導入事例■【日鉄ソリューションズ様】営業・SEの課題を生成AIで解決。「動くプロトタイプ」で合意形成を高速化、業務別のAI活用を短期間で実現

日鉄ソリューションズ株式会社は、日本最大手の鉄鋼メーカーである日本製鉄グループのシステムインテグレーターです。「ともに未来を考え 社会の新たな可能性をテクノロジーと情熱で切り拓く」というパーパスを掲げ、IT技術を活用した社会課題解決に取り組んでいます。2025年4月に創立25年を迎え、2025年度を第二の創業期として「NSSOL 2030ビジョン」を設定し、デジタルの力で産業・社会の変革と成長をリードし、さらなる事業拡大を目指しています。
日鉄ソリューションズ様は、Allganizeの生成AI・AIエージェントプラットフォーム「Alli LLM App Market」の販売パートナーとして多くのお客様の生成AI活用を支援しています。さらに、NSSOL 2030ビジョンの実現に向け、自社業務の効率化にAlli LLM App Marketを活用した取り組みを進めています。
今回は、生成AIによる自社業務の効率化、業務変革を進める中心メンバーの皆さんに、生成AI活用の背景や生成AI活用プロジェクトの推進方法などについて、お話を伺いました。

ー 皆様のご担当業務や役割についてお教えください。
草島様:ITサービス&エンジニアリング事業本部は、お客様の業界を問わず横串でITインフラを提供する部門で、約1,000人の社員が所属しています。私が所属するエンタープライズビジネス第三部は、日本製鉄ならびに日本製鉄グループ会社を担当する部署です。現在は部下3名を持つチームリーダーとしてアカウント営業に従事しています。また、ミドルオフィス推進(営業業務の効率化)と、AIラボ活動(AI活用・AIサービスの外販検討)にも従事しており、営業業務と同等の比重で取り組んでいます。
岡本様:私は草島さんと同じエンタープライズビジネス第三部と、営業統括本部 営業戦略部を兼務しています。営業統括本部は、お客様の経営課題や業界の状況から最適なソリューションを提供することをミッションとしています。
藤野様:流通・サービスソリューション事業本部は、リテール業界やサービス業界のお客様にさまざまなソリューションを提供する本部です。ソリューション営業推進部に所属し、Alli LLM App Marketをはじめとする生成AIソリューションを当社の既存顧客や新規顧客へ拡販する営業活動や、展示会やウェビナーなどのマーケティング活動を担っています。
堀内様:藤野と同じ本部のDXビジネス・イノベーションセンターに所属しています。当センターは、生成AIやデータ活用を軸としたソリューションにより、アカウント横断でお客様のDX推進に貢献する専門部隊です。今回のAlli LLM App Marketによる社内の生成AI活用においても、技術支援を行っています。

2030ビジョンの実現に向け、既存業務の限界を突破する一手として生成AIを活用。
ー 生成AIの活用を検討した背景について、それぞれお教えください。
草島様:営業職として従事する中で、社内事務作業や調整作業に多くの時間が割かれていることに課題を感じていました。2022年頃からまずは自部門の営業の業務負荷を下げるべく、営業事務を派遣メンバーに業務移管し、本来の営業活動にフォーカスできる環境を整える取り組みを行っています。この活動が評価され、営業効率化をミッションとした営業本部横断のミドルオフィス組織を正式に企画推進しております。
しかし、業務を右から左に移管するだけでは総量は変わりません。根本的な業務効率化が必須だと考え、生成AIの活用を検討し始めました。もともと生成AIの革新的なテクノロジーに興味があり、2023年夏頃からプライベートで利用しており、業務で活用できるようにしたいと思い社内に働きかけました。
堀内様:当社は、中長期経営戦略として「NSSOL 2030ビジョン」を掲げています。NSSOL 2030ビジョンでは、2025年対比で営業利益を約3倍(約360億円→1,000億円)にすることを目標に据えています。SE(システムエンジニア)業務では、いわゆる「工数売り」が強く残っており、利益を2倍3倍にスケールアップさせるには現在のやり方では限界があります。そこで生成AI技術を活用し、生産性向上を図りたいと考えました。
ー 具体的な生成AIの活用方法について、どのように検討したのでしょうか?
岡本様:部のプロジェクトとして生成AI活用に取り組んでいます。NSSOL 2030ビジョンの実現に向けて各本部が戦略を立てて取り組んでおり、ITサービス&エンジニアリング事業本部の中でも私の所属するエンタープライズビジネス第三部では、個人のビジョンと組織のビジョンを繋ぐ「Visionアプローチ」という取り組みを行っています。エンタープライズビジネス第三部では、Visionアプローチの核に、”お客様のAI活用をリードし、急速に進化するAIテクノロジーの恩恵を受けられること”を据えています。このVisionアプローチの実践にあたり、草島が中心となり「AIラボ」を立ち上げました。
草島様:AIラボでは、「AIに詳しい人材を育てること」「AIアプリを実装し、サービスとして公開すること」「お客様の課題を知ること」の3つの軸でアクション目標を定め、Visionアプローチを実現するタスクフォースとして、さまざまな取り組みを行っています。当部のお客様である日鉄グループは約500社にのぼり、その規模は大小さまざまでAI活用のリソースも各社ごとに異なります。日鉄グループ会社全体でAIの恩恵を受けようとも、各社の投資規模、AIリテラシーの差やAI人材の有無など個別にハードルがあります。そのため、AIラボが旗振り役となり、意識せずにAIを業務活用できる仕掛けを作りたいと考えました。
岡本様:お客様の課題を広く聞くために、日鉄グループ会社向けのAI勉強会を開催しています。最新AIトレンドの紹介やAIラボの活動紹介をしながらお客様におけるAI活用の状況をヒアリングし、想定される業務課題をリストアップしていきました。

ー 多数のお客様課題が集まったと思います。どのように優先順位をつけたのでしょうか?
草島様:はい、活動を通じて多くの顧客課題が挙げられました。中には限定的な業務もありましたので、まずは業務の汎用性やで、生成AIによる効果が大きそうな業務をピックアップしました。
藤野様:生成AIとの親和性や、実装のハードルの整理については、普段からAlli LLM App Marketをお客様に提案している流通・サービスソリューション事業本部がサポートしながら進めています。
ー ミドルオフィス業務や、SE業務における生成AI活用の検討方法についてもお教えください。
草島様:ミドルオフィスの生成AI活用も顧客課題と同様に、組織として業務負荷が高く、生成AIによる効果が高いものを選んでいきました。
堀内様:SE業務に関しては、一連の業務を紐解きながら検討しました。SE業務には、さまざまなフェーズやタスクがあります。上流においては思考を伴う作業が多数あり、現在は人が行う方が良いと考えています。一方で、保守フェーズでは、過去の事例をもとにお客様対応を行うシーンが多くあります。例えば、起票されたサポートチケットの内容を確認し、参考になりそうな過去事例を探して情報をまとめ、今回のケース向けに検証するといった形です。過去事例を探して情報をまとめる部分など、まさにRAGを使った生成AIとの親和性が高い領域ですので、保守業務からスタートすることにしました。
業務に即した生成AI活用を高速検証できるAlli LLM App Marketを高く評価。
ー 生成AIを活用する手段として、 Alli LLM App Marketを選択した理由を教えてください。
草島様:ノーコードで簡単に業務に適したアプリを作れる点を評価しました。すぐにでも着手したかったので、簡単にプロトタイプを作って形にできるAlli LLM App Marketは要件的に合致していました。
岡本様:Alli LLM App Marketはプログラミング不要でアプリを作れるので、顧客の課題解決に向けた検証を行う環境として最適でした。また、当社が販売パートナーとしての実績やノウハウも持っており、安心して始められました。
堀内様:SEの視点でも、「こういうことは生成AIでできるだろうか」と思った時に、ノーコードでパッとすぐに試せる点が非常に良いと思います。また、この変化の早い生成AI業界の中で、Alli LLM App MarketはDeep ResearchやAgent Builderといった機能がいち早く実装されるので、最新技術に手軽に触れられる点も大きな魅力だと感じています。

ー スピーディに業務に適した形で生成AIを試せる点を高くご評価いただき、嬉しく思います。実際に利用してみて、いかがでしたでしょうか?
草島様:AIラボは3名の少人数プロジェクトですが、プロジェクトの立ち上げから2ヶ月弱で、実際の業務課題に沿った生成AIアプリを作成できました。現在は1-2週間毎に1つのスパンで生成AIアプリを作成しており、スピード感を持って取り組めています。また、作成の難易度が低いので、複数のアプリを並行して進めることもできています。
決裁文書起案のサポートアプリでは、年間350時間の業務時間削減を実現。
ー 実際に作成された生成AIアプリについてお教えください。
岡本様:多数作成していますが、効果の高いアプリのひとつに、「新旧契約書の比較」アプリがあります。お客様に提供しているサービスのベンダー利用規約などが変更された際に、新旧対照表を作成してご提示しています。中には英語の契約書もあったり、変更箇所が何十項目にものぼる場合もあり、手間のかかる作業でした。新旧契約書をそれぞれアップロードするだけで、お客様に提供可能なフォーマットで対照表を作成できる生成AIアプリを作ったところ、業務負荷が大きく減りました。
草島様:営業が使う「決裁文書起案のサポート」アプリも高い効果があります。営業関連の稟議書を、当部では年間 約200件、本部では約1,400件も作成しています。稟議対象の契約書を読みこむと、当社フォーマットの稟議書に沿った形で起案文章が作成される仕組みです。こちらをワークフローシステムと自動連携できるよう実装し、稟議書作成画面で生成AIアプリを呼び出し、生成結果を自動入力する仕掛けを作りました。1件あたり約15分短縮できると想定した場合、本部全体で年間350時間の削減になります。
成功の鍵は「動くプロトタイプ」。実物で効果を示し、部署の垣根を越えた活用へと発展。
ー 生成AIアプリ展開後、社内からの評判や反応はいかがでしたか?
堀内様:SE業務では、まず1つのプロジェクトを対象に保守業務のナレッジ検索アプリを作成しました。RAGを用いて、過去の対応事例などを柔軟に検索できるようにしたところ、好評価のフィードバックを得ています。他のSEチームから、同様のことをやってみたいという声をいただいています。
草島様:新しいアプリが出来上がったら、自分のグループに展開したり、本部内のナレッジ共有会で活動内容を発信しています。日常会話やナレッジ共有会のアンケートなどで、「あのアプリよかったよ!」「こういうのはできますか?」「自分でもっとカスタマイズしてみたい」といった声をたくさんいただいています。
岡本様:全社勉強会にも登壇し、AIラボの取り組みを紹介したところ、他部署からも「自分たちも試してみたい」といった相談を10件以上いただき、順次打ち合わせをしています。
ー 社内から高い評価を得られたポイントはありますか?
草島様:まず、実際に動く生成AIアプリをスピーディに作成できたことが大きいと考えています。机上の議論ではなく、実際に動くアプリを見せることで生成AIの有効性や、活用イメージを早々に掴んでいただくことができました。また、実際のお客様課題に沿ったプロトタイプを多数作成して社内に発信し、積極的にフィードバックを得たことで、活動自体の重要性などが可視化され、上層部の理解を得られた点も大きいと考えています。

ー Allganizeのサポートについてはいかがでしょうか。
堀内様:仕様などの細かい部分や、個別事象について質問することも多くありますが、担当の佐々野さんを中心に、いつも丁寧に対応してもらっています。質問への対応スピードも早いので、助かっています。
AIエージェントで次なるステージへ。基幹システム連携や思考を伴う業務の自動化で、さらなる業務効率化を目指す。
ー 今後の展望について教えてください。
草島様:今後も引き続きAlli LLM App Marketで業務テーマ別の生成AIアプリを作成していきます。AIラボの取り組みの中で、実際にお客様に提案できる生成AIアプリも作成できましたので、お客様の業務効率化を実現するソリューションのエンジンとしての活用を検討しています。
岡本様:さらにアウトプットを工夫していきたいと考えています。基幹システムと連携したり、AIエージェント機能を使ったり、自由度をもっと上げていきたいです。
藤野様:RAGエージェントを使って、本部内のナレッジ共有を促進していきたいと考えています。Alli LLM App Marketで実現できることが多数ありますので、今後も社内やグループ会社に周知しながら、草島さんや岡本さんのような取り組みを増やしていきたいと考えています。
堀内様:AIエージェントにより、これまでAIに任せられなかった思考を伴う業務も任せられるようになりました。最終判断は人間であっても、状況を整理し、取りうる選択肢を絞り込んで提案してくれるのはとても便利です。社内ドキュメント対応のDeep Research機能も有効です。今後はAgent Builderなどをもっと本格的に活用し、より自由度の高い業務をAIエージェントで効率化していきます。そして、その空いた時間でさらに次の一歩への弾込めを行い、生成AI活用をリードするチームを目指していきたいと考えています。