■導入事例■【三島信用金庫様】生成AIを活用し、地域金融機関としての新たな付加価値創造に挑戦

三島信用金庫は、富士山・駿河湾と相模灘に囲まれた伊豆半島と静岡県東部に店舗を展開する1911年に設立された地域金融機関です。信用金庫法に基づき、経営理念である「共存同栄」のもと、顧客、地域、金庫そして従業員の発展や繁栄に貢献しています。
2024年度から始まった新たな中期経営計画(2024〜2026年度)では、「地域を未来に『TUNAGU』」をテーマに、「価値創造」「人づくり」「DX」の3つを行動指針に掲げています。DX施策の一環で、全社の生成AI活用基盤にAllganizeのAlli LLM App Marketを採用いただいております。
生成AIの業務活用に取り組む 常勤理事 業務サポート部 部長 大村様、業務サポート部 システム企画課 課長 長澤様・主査 峰尾様・三ヶ野原様、経営企画部 デジタルイノベーション課 課長 掛橋様・企画役 山本様・主査 松岡様、マーケティング戦略部 商品開発課 課長 山﨑様・企画役 山田様にお話を伺いました。
ー 皆様の業務や役割についてお教えください。
山本様:当金庫では、社会課題である少子化や高齢化の進行に伴う働き手不足への対応などを背景に金融機関としてもDXに取り組み、さらに取引先へのDX支援にも取り組むようになりました。経営企画部 デジタルイノベーション課には営業店経験者も在籍しており、金庫業務へのDX推進に取り組んでいます。
長澤様:業務サポート部 システム企画課では、社内の情報システム担当としてシステム開発・運用管理、セキュリティ管理、業務IT端末の運用管理、システムや端末の利用者支援を担当しています。
山﨑様:マーケティング戦略部 商品開発課では、定期預金や融資に関するキャンペーン商品などを企画しています。商品に関する営業店からの質問に対応したり、お客様からの質問に対応することも多くあります。
ー これまでのDXのお取り組みについて、お教えください。
山本様:昨年から今年にかけて、働きやすい環境づくりに注力しています。職員の利便性の向上を目的に業務用スマートフォンを全職員に配布し、コミュニケーションの迅速化や円滑な電話取次を実現しました。現在は働き手が減少する中で、職員の生産性を上げるための取り組みに注力しています。
また、デジタル時代ですので、今後はお客様がオンラインで手続きを完結できるような取り組みも進めています。
松岡様:デジタル技術を積極的に活用しながら人材育成に繋げる狙いもあります。デジタルイノベーション課の設立から2年が経ち、職員から要望が上がってくる機会も増え、DXへの取組姿勢が浸透してきたと感じています。
ー DXにおいて、重視していることはありますか?
大村様:最も重視しているのはセキュリティの担保です。信用金庫は許認可業務であり、特に情報の管理には細心の注意を払っています。セキュリティを確保しながら、デジタル技術を活用し、どう生産性を上げていくか、どうブレイクスルーをしていくかが大切です。
山本様:利便性の向上と同時に、情報漏洩の防止に注力しています。昨年全社導入したスマートフォンに関しても、セキュリティ機能を強化して業務活用しています。
社内問い合わせ対応が喫緊の課題。さらに生成AIの将来性を見据え、導入を決断。
ー 生成AI活用に取り組んだ背景をお教えいただけますか?
長澤様:最初のきっかけは、社内の問い合わせ対応のチャットボットの改善です。社内向けにシナリオ型のチャットボットを利用していたのですが、メンテナンスの課題がありました。階層構造のFAQを一覧にしたExcelを作成し、各部に配布して情報を更新していましたが、作業負担が大きく、タイムリーなシナリオの更新ができず利用が低迷していました。
峰尾様:FAQのメンテナンスが大変だったため、回答の見直しやシナリオの更新頻度が年に1回程度になっていました。最新情報がなかなか反映できないため、結果的にチャットボットの有用性を高めることができず、最終的には質問回数が月に10件以下に落ち込んでいました。
山本様:運用しやすいソリューションを探していたところ、生成AIとRAGによる回答自動生成タイプであれば、メンテナンスの問題を解決できることを知りました。当時はChatGPTなどが話題になっていた時期で、若手職員から「生成AIを業務で活用したい」という声も上がっており、本格的に検討を開始しました。
大村様:今後は生成AIの業務活用が当たり前になっていくと考えています。我々にはお客様のDXを支援する役割もありますので、いち早く生成AIを活用していきながら、生成AIの利点や特性を理解していく必要もあります。機密情報保護など必要な対策を講じることで、生成AIの業務活用が可能であると判断し、導入を決断しました。
メンテナンスのしやすさ、回答根拠の明瞭さなど、4つの点を評価しAlli LLM App Marketを採用
ー どのように導入する生成AIツールを検討したのでしょうか?
山本様:金庫内の問い合わせ対応の効率化や職員の生産性向上に繋がるか、本部担当部署のメンテナンス負荷の軽減に繋がるか、生成AI活用ツールとして利用可能か、業務用スマートフォンで活用できるか、といった観点で導入するツールを検討していきました。
長澤様:最終的に3つの製品を比較したところ、Alli LLM App Marketは全ての点をクリアしていました。特に評価したのは次の4つのポイントです。
<Alli LLM App Market 評価のポイント>
1. 運用負荷を大幅に軽減できる仕組み
運用管理負担を大きく軽減できる点が、第一の評価ポイントでした。
社内問い合わせ対応として利用する場合、ドキュメントを追加・更新するだけで生成AIが最新情報から自動応答してくれるため、面倒なFAQのメンテナンスが不要です。ドキュメントの管理方法もわかりやすく、最新情報を容易に反映できます。
2. 回答根拠の明瞭さ
ドキュメントから回答自動生成(RAG)では、回答とともに、回答根拠となったドキュメントの該当ページ・該当箇所がダイレクトに表示されます。
当金庫はルールを順守する組織であり、エビデンスが明確であることは非常に重要です。Alli LLM App MarketのRAGの仕組みは出典情報が明らかであり、安心して業務活用できると判断しました。
3. セキュリティポリシーに合った仕組み
当金庫では日本国内のサーバーで管理できることを、利用するクラウドサービスのセキュリティポリシーとして定めています。Alli LLM App Marketは、LLMも日本リージョンのモデルを選べるため、セキュリティポリシーに合致しています。また、セキュアブラウザ経由での利用も可能で、セキュリティ観点でも安心して利用できます。
4. 導入運用コスト
事前の環境構築に高額な費用がかかるサービスもある中で、Alli LLM App Marketは初期費用が30万円と低コストで、運用料金も月額制で導入しやすい価格体系でした。
峰尾様:当庫はセキュリティを担保するために、外部との通信は、しんきん情報システムセンター社(SSC)の信用金庫向けネットワークサービス(Face to Faceネット)を利用しています。Alli LLM App Marketも本ネットワーク経由で利用できたので、導入できました。
利用者目線に立ち、誰もが自然に生成AIを業務活用できる仕掛けづくりを実施。
ー 社内展開において、工夫されたことはありますか?
大村様:ITリテラシーの差が大きい業界であるため、まず生成AIに慣れてもらうことが重要だと考えています。社内のナレッジ検索、要約、調べ物など、わかりやすいところから活用をスタートし、段階的に活用範囲を広げていく方針をとりました。
三ヶ野原様:「ドキュメントから回答自動生成(RAG)」を活用した社内問い合わせ対応アプリと、「LLMとチャットアプリ」から業務活用を開始しています。社内ポータルに、LLMとチャットアプリと社内問い合わせ対応アプリを常駐させて、誰もがすぐに利用できるようにしています。業務用スマートフォンでも利用できるよう、スマートフォンのホーム画面に三島信用金庫のイメージキャラクター「みゅうくん」のアイコンを表示するようにしました。
峰尾様:また、利用する職員の利便性を考えて、問い合わせの入り口を一つにしています。
お問い合わせ対応アプリを開くと、「規程要領検索」「商品・アプリ」などのカテゴリが表示され、カテゴリを選んで質問するとAIが対応してくれる仕組みです。”このアプリを開けば、AIが教えてくれる” という環境を作りました。
導入後、電話問い合わせが半減。本部部門では、日々の業務支援ツールとして定着。
ー 生成AIアプリを社内展開した後、皆様の業務に変化はありましたか?
長澤様:金庫内の問い合わせ対応については、社内でも特に問い合わせの多い、金融商品に関するお問い合わせ対応と、ITに関するお問い合わせ対応の2つの業務から活用を開始しました。
山﨑様:商品開発課では、これまでも社内掲示板やポータルサイトで商品情報を共有していましたが、後から情報を探すには、タイトル検索で探す必要があり、必要な情報を見つけにくい状況でした。
山田様:これまで、1日約30件の商品関連の電話問い合わせがありましたが、Alli LLM App Marketを活用しはじめてから、電話件数が約半分に減りました。以前多く発生していた、金融商品の手数料の確認などの簡単な問い合わせがほぼなくなり、電話も本当に確認が必要な問い合わせに絞られています。
山﨑様:Alli LLM App Market導入後は、チャット形式で質問すればAIが求める情報を提示してくれるため、検索性が大きく改善しました。金融商品の資料などをAlli LLM App Marketに登録しておき、社内からのお問い合わせに自動応答しています。FAQは利用せず、生成AIの回答自動生成のみを利用しています。
三ヶ野原様:業務サポート部では、主管部署として社内からの問い合わせアプリを作成しています。以前のシナリオ型のFAQチャットボットに比べて運用がとても簡単になり、1人でメンテナンス対応できるようになりました。
峰尾様:AIで自動応答する対応範囲を徐々に広げています。Alli LLM App Marketの回答自動生成アプリに変更してから、一部の部署で問い合わせが減ってきており、効果を感じ始めています。
ー 「LLMとチャットアプリ」についてはいかがでしょうか?
山本様:運用開始段階では、稟議書作成などは機密情報も多いため利用対象から除外しています。現在の利用状況は、ChatGPTのように日々の文章作成や要約などに活用されています。
大村様:マネージャーとして、挨拶文の準備などにも活用しています。特に本部職員が良く利用しており、なくてはならない存在になっています。
峰尾様:さらに多くの職員に自身の業務効率化に活かしてもらえるよう、活用方法や利用のコツについて社内勉強会などの啓発を続けていきたいと考えています。
ー Allganizeの対応について、いかがでしたか?
峰尾様:担当の中島さんの支援が手厚く、回答スピードも早いと感じています。回答に時間がかかると当社の業務にも支障が出てしまいますが、待ち時間なく疑問を解消できるので、助かっています。
長澤様:想像以上に開発もスピーディで驚きました。新しい機能が続々と実装されていくので嬉しく思います。
山本様:サポートや提供サービスの内容など、ベンダーとしてのフットワークの軽さを感じます。定例ミーティングで運用上の課題解決や技術的なアドバイスを受けることができ、助かっています。
三島信用金庫 経営企画部 デジタルイノベーション課 主査 松岡様
次世代の金融パーソンとして生成AIを使いこなし、地域を支える金融機関として、さらなる価値提供を目指す。
ー 今後の展望について、お教えください。
掛橋様:全社的に問い合わせ対応の効率化が求められており、利用部門の横展開をしていく予定です。たとえば本部に関しても、業務サポート部のみならず、人事課、総務課、主計課などに広げていきたいと考えています。
松岡様:営業業務の効率化にも生成AIを活用していきたいと考えています。要約や文章作成以外にも活用できるシーンが多数あると考えています。人事異動が定期的にあるため、対応の平準化やロールプレイングなど、生成AIで解決できることがありそうです。他社の事例も参考にしながら取り組んでいきたいと思います。
峰尾様:社内に展開する生成AIアプリも今後増やしていきたいと考えています。たとえば、定期的に新規アプリをリリースするなど、職員が飽きずに活用できるような環境を作っていきたいです。
大村様:徐々に活用範囲を広げながら生成AIに慣れ親しみ、次世代の金融パーソンとして生成AIを使いこなせるようになれば、付加価値の高い営業対応やお客様に寄り添ったDX支援が可能となります。業務サポート部では、生成AIの全社活用を積極的に推進するために、生成AIアプリの利用実績を組織の定量目標の一つとして設定しました。自社の業務効率化にとどまらず、地域を支える金融機関としてより良い価値を提供できるよう、Alli LLM App Marketを最大限活用していきたいと考えています。
ー貴重なお話をありがとうございました。
・Alli LLM App Market:お客様導入事例一覧
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