◼︎導入事例◼︎【Meiji Seika ファルマ様】承認申請資料のチェックからMR活動報告の分析・示唆抽出まで。 製薬企業の全社AI活用
Meiji Seika ファルマ株式会社は、明治グループの医薬品事業を担う企業として、人々の健康と社会の安心に貢献しています。感染症領域を中心に、医薬品の研究・開発・製造・販売を一貫して行い、特に抗菌薬分野で国内トップクラスの実績を有しています。ワクチン事業にも注力し、予防と治療の両面から公衆衛生の向上に寄与。さらに免疫炎症領域等の新薬、ジェネリック医薬品の安定供給にも取り組み、グローバルに高品質な医薬品を供給しています。
Meiji Seika ファルマ様では、社内チャットボットの刷新と、社内に蓄積されたナレッジの有効活用を目的に、Allganizeの生成AIプラットフォーム「Alli LLM App Market」を導入しました。
現在は、社内問い合わせ対応に加え、新医薬品の承認申請資料のチェックやMR活動報告の分析・示唆抽出など、各部門の業務に応じた50以上の生成AIアプリを全社で活用しています。社内問い合わせ対応工数を月32.3時間削減したほか、属人化していた専門業務の標準化、業務品質の向上、社内データを活用した意思決定支援にもつながっています。
今回は、生成AI活用を推進されている皆様に、生成AI導入の背景、ツール選定のポイント、活用業務、社内定着に向けた工夫、今後の展望など、詳しくお話を伺いました。
ー 皆様のご担当業務や役割についてお教えください。
安田様:情報システム部は、全社のIT基盤の運用およびデジタル活用の推進を担っています。中でも、私が所属するテクニカルオフィスグループでは、社内システムやアプリの開発を担い、業務の効率化やデータ利活用を支援しています。
岩井様:テクニカルオフィスグループに所属し、業務部門の要望やニーズを踏まえながら、RAGを中心としたアプリ開発に携わっています。
高橋様:私が所属する技術グループは社内インフラを担っており、Microsoft 365製品や社内チャットボットの運用、ならびに生成AIの利活用推進を担当しています。
増田様:今年度、研究開発部門から情報システム部テクニカルオフィスグループに異動しました。利用部門での知見を活かしながら、AIアプリ開発および活用推進を担っています。
蓄積された社内情報をナレッジ化し、生成AIで全社の業務遂行力を強化する仕組みが求められていた
ー 生成AI活用をご検討された背景をお教えください。
安田様:大きく2つあります。1つ目は、従来の社内チャットボットの改善です。2つ目は、社内に蓄積された情報を、より有効に活用できる仕組みの実現です。
高橋様:従来はFAQタイプのチャットボットを利用していました。いわゆるAIチャットボットというよりも、検索ベースで回答を出すものに近い仕組みです。性能面で十分とは言えず、期待する回答が返ってこないことが多くありました。その結果、利用者側にも「使いづらい」という印象が生まれ、利用率が徐々に下がっていました。
高橋様:元データのメンテナンスに多くの工数がかかっていたことも課題でした。利用部門側で主体的に運用・改善しづらいUIや仕組みだったため、現場にとっても改善しにくい状態でした。そのため、既存のチャットボットを刷新し、社内問い合わせ対応の効率化や回答品質の向上を実現したいという思いがありました。
安田様:また、社内には多数のドキュメントが蓄積されています。これらをもっと有効活用できる仕組みも必要だと考えていました。RAGを活用することで、社内ドキュメントを単なる検索対象ではなく、意思決定や業務遂行を支援するナレッジ基盤として活用できるのではないかと期待しました。

3,000人規模の全社利用を前提に、RAG精度・コスト・運用性・既存環境との親和性・伴走力などを総合評価
ー 生成AIソリューション導入のポイントや決め手をお教えいただけますか?
高橋様:前述のとおり、社内チャットボットとRAGが利用できることを前提に検討を進めました。複数のサービスを並行して試し、実務での使い勝手や精度を比較検討した結果、次の点を評価し、AllganizeのAlli LLM App Marketの導入を決めました。
Alli LLM App Market 導入の決め手
- 3,000人規模の全社利用に適した従量課金型の料金体系
- 業務利用に耐えるRAGの回答精度
- RAGのソース情報・回答根拠の分かりやすさ
- ユーザー権限設定など、エンタープライズ利用に必要な運用性
- SharePoint連携、Microsoft Entra連携(SSO:シングルサインオン)による既存環境との親和性
- 海外拠点での利用も見据えた多言語対応
- 迅速で親身なAllganizeの伴走支援
高橋様:ユーザー数は全社で3,000人弱になります。ユーザーライセンス制の場合、全社展開するにはコストが大きくなってしまいます。生成AIの技術も日々進化している中で、1つのツールに高額な投資を固定的に行うべきではないと考えていました。その点、Alli LLM App Marketはユーザー数を問わない従量課金型であり、全社利用を前提とした導入に適していました。
また、LLMのモデルを選べることや、チャットボットだけでなく、さまざまな業務向けアプリを作成できる点も良いと感じました。
安田様:私たち情報システム部だけでなく、現場も巻き込んで運用していく想定でした。そのため、利用できる機能やアクセスできるアプリ、参照できるデータに制限をかけて運用できることも重要でした。全社で活用するには、便利であるだけでなく、部門や用途に応じて、適切に権限を管理できることが欠かせません。
岩井様:RAGに関しても、他の製品と比較して、回答精度や回答根拠の分かりやすさを評価しました。特に、Excelのドキュメントなど、他のRAGでは扱いが難しかったデータにもAlli LLM App MarketのRAGは対応できました。回答とともに参照元のプレビューが表示される仕組みも、業務利用において魅力的だと感じました。
高橋様:また、海外拠点での利用も想定していたため、英語だけでなく、アジア圏の各言語やスペイン語などで利用できる点も導入の後押しになりました。
高橋様:導入時に担当いただいた営業担当者をはじめ、Allganizeの皆様のレスポンスが早かったことも印象的でした。疑問点に対して、こちらの要件をうまく汲み取ったうえで丁寧に回答していただきました。新しいLLMへの実装スピードも早く、生成AIの技術進化に合わせて安心して業務利用できると感じました。

50以上の生成AIアプリを全社で活用し、部門ごとの課題解決へ
ー 現在、50個以上の生成AIアプリを公開されています。どのように業務で活用されているのでしょうか。
高橋様:1つは、全社員が利用する社内チャットボットです。情報システム部が担当するシステム関連の問い合わせ対応に加え、総務部と連携した各種手続き案内、勤怠・経費・申請関連のガイドなど、複数の部署の情報を一つのチャットボットにまとめて運用しています。チャットボットは情報システム部で作成し、関連ドキュメントのメンテナンスは各部署が担当しています。以前に比べて、メンテナンス負荷は大幅に下がりました。
安田様:業務特化型の生成AIアプリについては、社内の全本部で多様な用途に活用されています。
主な活用領域は、以下のとおりです。
1. 意思決定支援業務
研究開発戦略、品質判断、安全保障対応などにおける判断材料の提供・整理
2. ナレッジ検索・情報活用業務
社内文書、技術資料、過去記録などの検索・参照・活用
3. 文書作成・レビュー業務
各種計画書、承認申請関連資料、プロモーション資材などの作成支援およびチェック
4. 問い合わせ対応・業務支援
社内システムや業務に関する問い合わせ対応の自動化・効率化
5. 仮説生成・分析業務
データ解析によるニーズ抽出や仮説立案(臨床・市場など)
6. 業務効率化・汎用AI活用
Deep Researchなど、リサーチツールによる日常業務の効率化
7. 法令対応
輸出する貨物や技術について、輸出関連法に該当するか否かの判定をサポート
岩井様:単なる汎用的な生成AIチャットアプリではなく、部門ごとの業務フローや課題に合わせてAIアプリを作成できる点が大きいです。社内問い合わせ対応だけでなく、承認申請資料のチェック、MR活動報告の分析・示唆抽出、研究開発領域のリサーチなど、具体的な業務に合わせた活用が広がっています。
月32.3時間の問い合わせ対応削減に加え、属人化業務の標準化や品質向上にも貢献
ー Alli LLM App Marketを導入してからの変化などはありましたか?
高橋様:社内チャットボットをAlli LLM App Marketに切り替えたことで活用が促進され、問い合わせに対応する部門の工数を、1か月あたり32.3時間削減できました。
経費精算システムの利用ガイドにもAlli LLM App MarketのRAGチャットボットを利用しています。経費精算システムの公式チャットボットと比べても、回答精度の高さを感じており、問い合わせが減りました。
安田様:問い合わせ対応の削減だけでなく、業務のアウトプット品質の向上や、属人化していた複雑な業務の標準化にもつながっています。業務フローに沿った生成AIアプリをノーコードで作成し、複雑な業務のサポートツールとして活用しています。AIが即座に「結果の初案」、いわゆるたたき台を提示してくれるため、経験の浅い担当者でもゼロから悩むことなく、一定の水準で業務を進められるようになりました。
また、外部ツールでは扱いづらい機密情報を含めたリサーチも可能になりました。社内規定や独自のノウハウに基づいた高精度な回答を得られる点も、大きな価値があります。
岩井様:見落としが許されない承認申請書類の一次チェックにも、オリジナルのAIアプリを活用しています。製薬業界ならではの業務ですが、新医薬品の製造承認を得る際には、有効性や安全性、品質などを示す多岐にわたる資料を作成・確認する必要があります。資料が100ページを超えることがあり、記載内容の整合性や過去事例との比較、規制要件への対応など、確認すべき観点は多岐にわたります。新薬開発は長期にわたるプロセスであり、その成果を承認申請へとつなげる資料作成・確認は、非常に重要な業務です。
一方で、承認申請関連資料の作成・確認は日常的に頻繁に発生する業務ではないため、十分な経験を持つ担当者が限られやすいという課題があります。そこで、過去の膨大な申請資料をRAGの参照元にすることで、類似案件を探したり、過去の照会事項の回答方法の確認を容易にしたりすることで、担当者の経験に依存しすぎず、申請資料チェックの品質向上効率化を図っています。
増田様:以前は、申請書を作成する際はすべて人の手で対応し、時間をかけて何度もレビューを重ねていました。現在は、ナレッジ検索や一次チェックをAIで行うことで、大幅な業務効率化につながっています。経験者の知見を活かしながら、専門業務の属人化解消や品質向上にもつながっていると感じています。
安田様:社内ドキュメントに対応したDeep Researchも多く利用されています。研究職、営業職、人事、経営企画など、多くの部署で使われています。
一例を挙げると、研究開発部門では薬剤の市場性調査、営業部門では自社内のMRの営業データからのインサイト抽出などに活用されています。
岩井様:MRの活動報告には、日々の営業活動に関する情報が蓄積されています。従来は、こうした情報をもとに営業対応を検討する場合、担当者の経験や感覚に頼る場面もありました。そこで、活動報告から抽出したデータをDeep Researchで分析。営業活動の傾向や次のアクションにつながる示唆を、客観的に把握できるようにしています。
岩井様:その他にも、MRが医療機関に提供するプロモーション資材に関する社内審査をAIで一次チェックするアプリなど、各部署の課題に特化したアプリが次々と生まれています。汎用的な生成AIと、社内情報を参照するRAGを使い分けたいというニーズに応える形で、活用が広がっています。

構想から運用まで「現場が主役」。AIを業務に定着させる実装プロセスを確立
ー わずか1年足らずで全本部への展開を達成されています。そのスピード感を実現できた秘訣、工夫されたことをお教えください。
岩井様:当社では「デジタルビジネス・アンバサダー制度」を設け、各本部が主体的にDXや生成AIの活用を推進できる体制を整えました。
DXや生成AIの活用は、情報システム部だけで実現できるものではありません。実際に課題を抱えているのは現場である各本部であり、課題の選出も各本部が主体になって行うことが重要です。そのうえで、AI化やデジタル化に向けた仕組みづくりを情報システム部が支援することで、現場の課題に即した、より実効性の高い推進体制を構築できると考えました。
現在は、AIを活用して実現したいことを各本部のアンバサダーを通じて集約し、短いサイクルで検証・改善・展開する流れを確立しています。
ー 具体的にどのような仕組みで実現されたのか気になります。アンバサダーの選出方法や、役割分担などはどのようにされているのでしょうか。
安田様:アンバサダーは公募制で、自ら手を挙げたメンバーで構成されています。各部門に配置されたアンバサダーは、現場の業務課題やニーズをヒアリングし、AIアプリの構想をまとめます。そのうえで、私たち情報システム部と連携しながらAIアプリを作成し、運用や改善にも取り組んでいます。
岩井様:公募によって集まったメンバーであるため、推進力がある点が大きいです。また、アンバサダーの動き方や具体的な実現方法は各本部に任せています。現場をよく知る社員が企画したAIアプリだからこそ、業務との適合性が高いと感じています。さらに、アプリを作成して終わりではなく、業務での活用方法や業務フローへの組み込み方までアンバサダーがサポートしています。そのため、着実な業務実装につながっていると感じています。
増田様:私自身も以前は研究開発本部のアンバサダーとして活動していました。Alli LLM App Marketは自由度が高く、業務フローに合わせた複雑な処理にも対応できます。例えば、マルチ処理や細かな設定を活用することで、現場の業務課題に適したAIアプリを作成できます。
現場には、「こういうことをAIで実現したい」という具体的なニーズがあります。Alli LLM App Marketでは、そのニーズに合わせて柔軟にアプリを設計できるため、現場が本当に実現したいことに近づけることが非常に有用だと感じています。
構想・PoC・運用移管で進める、現場起点のAIアプリ開発プロセス
ー AIアプリは、どのようなプロセスで業務に実装されているのでしょうか。
高橋様:当社では、構想、環境構築、PoC、運用移管という流れでAIアプリを実装しています。
<AI業務実装のプロセス>
1. 構想
実際に業務を行っている依頼部門が主体となり、自部門の課題に基づいてアプリ案を立案。現場ニーズに即した実用性の高いテーマ設定を実現しています。
2. 環境構築
情報システム部が開発環境を整備します。専門部門が基盤を担うことで、開発効率と安全な利用環境を確保しています。
3. PoC実施
依頼部門と開発側が連携し、実際の業務に即した形で検証を行います。効果や実用性を確認し、現場で本当に使えるかどうかを見極めます。
4. 運用移管
完成したアプリを依頼部門へ引き渡し、各部門が主体となって運営・管理します。開発して終わりではなく、現場で継続的に活用される仕組みを重視しています。

生成AI活用を共に進めるパートナーとして、サポート体制を評価
ー Allganizeのサポートについて、いかがでしょうか?
高橋様:Allganizeのサポート体制については、非常に満足しています。
導入前後を通じて、こちらの立場や理解度に寄り添いながら、丁寧に対応していただける点が印象的です。単なるツール提供にとどまらないサポートだと感じています。質問もしやすく、遠慮なく相談できる関係性が構築できています。
岩井様:問い合わせへのレスポンスが早く、疑問点に対する説明にも納得感があります。
要望に応じた迅速な提案や改善、問題発生時の即応、こちらの利用状況や要望を踏まえたフィードバック、改善提案、アドバイスなどを多く提示してもらえる点も良いと感じています。
安田様:生成AIは技術の進歩が非常に速いため、導入して終わりではなく、継続的に改善しながら活用していく必要があります。その点で、Allganizeの「伴走」のスタンスは明確で、生成AI活用を進めるうえで心強いパートナーだと感じています。
全社的なデータ利活用と付加価値創出へ。現場主導で、AIと共に進化し続ける組織を目指す
ー 今後の展望について、お聞かせください。
高橋様:今後は、より多くの業務プロセスに生成AIやAIエージェントを組み込み、手元の業務効率化だけでなく、より大規模な付加価値創出やデータ利活用につなげていきたいと考えています。また、RAGを活用したナレッジ基盤の強化や、利用部門主導のアプリ開発支援にも継続して注力していく予定です。
岩井様:現在はBIツールを利用していますが、数値を確認するだけでなく、その背景にある文脈や外部情報と組み合わせたインサイトを、AIエージェントと対話形式で手軽に得られるようになると、さらに活用の幅が広がるはずです。将来的には、Allganizeのプラットフォーム上で、データ分析基盤に匹敵するような高度な分析・示唆出しを実現できれば、大きな魅力になると感じています。
安田様:また、「Coworker」といった最新技術にも注目しています。技術の進化は非常に速いですが、Allganizeには、今後も私たちの要望に寄り添いながら、最先端の技術動向を共に追いかけるパートナーであり続けてほしいと期待しています。アンバサダー制度を軸に、現場の誰もがアイデアを出し、自らアプリを使いこなしていけるような企業文化を、これからも育てていきたいと考えています。
ー 貴重なお話をありがとうございました。
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