■導入事例■【ディーエムエス様】年代・役職を問わず生成AIを使いこなす組織へ。全社的な業務品質向上と創造性強化への挑戦

株式会社ディーエムエス様は、「クライアント企業と消費者のよい関係づくりをトータルサポートする」ことをビジョンに掲げ “ダイレクト・コミュニケーション” を主軸として、1961年に事業をスタートしました。その後、セールスプロモーション、コールセンター、物流、イベントと事業領域を拡大し、クライアント企業と消費者の関係構築を多角的にサポートしています。業務プロセス全体の最適化を目的としたBPOサービスも積極的に展開し、書類やWebで受け付けた情報のデータ化をはじめとした業務の代行から関連システムの開発まで対応する幅広い支援、PCI DSSに準拠した堅牢で安全なインフラにより、自治体や金融系などさまざまなクライアント企業に選ばれています。
さらなる業務の高度化や生産性の向上を目指しており、実現施策の一つとして生成AIの全社活用に取り組んでいます。今回は、Allganizeの生成AIプラットフォーム「Alli LLM App Market」を活用いただいている生成AI導入プロジェクトの中心メンバーの皆様にお話しを伺いました。

ー 皆様の部署の業務や役割について教えてください。
伊沢様:経営企画室 デジタル推進グループでは、全社のDX推進支援を担当しています。いわゆる情報システム部に近い立ち位置で、各部の業務効率化ではなく、働きやすい環境づくりや全体最適を見据えた取り組みを行っています。AI活用の他に、RPAなどの取り組みも行っています。
市川様:生成AIの導入に向けて、デジタル推進グループにて「生成AIツール導入プロジェクト」を立ち上げ、生成AI活用に前向きな選抜メンバーとともに、全社の生成AI活用を推進しています。経営企画は伊沢さんと私の2名体制で人数的に対応範囲が限られていますし、ユーザー目線で推進していくためには、形式ばった運営ではなく部門横断で進める必要があると考え、プロジェクトを組成しています。
伊沢様:プロジェクト運営事務局を市川さんと私が担い、生成AI導入サポートチームとして、営業系は企画設計部 冨所さん、業務系は経営企画室 小野寺さん、管理系は総務部 藤田さんにサポートいただきながら進めました。冨所さんには、アプリ開発に関わる部分も実施いただいています。
生成AIの早期活用により、創造性と業務品質を向上させ、企業の競争力強化へ
ー 生成AI全社導入の狙いをお教えください。
市川様:ChatGPTの登場以降、生成AIの企業導入が拡大しており、当社でも早期活用による競争力強化を目指したいと考えていました。経営陣の生成AIへの期待と経営企画の狙いも合致し、活用検討をスタートしたという背景があります。
伊沢様:生成AIにより、これまでの業務スタイルを根本的に変革し、業務効率化や創造性の向上を実現できるのではないかと考えました。生成AIの導入で特に期待したのは、大きく2つあります。
<生成AI導入による期待>
- 創造性強化生成AIを活用することで、新しい視点を獲得し、社内ノウハウでは得られないような解決策を生み出せます。
- デスクワークの効率や品質の向上生成AIは決して特殊なものではなく、日常的に広く行われている業務に生成AIを取り入れられます。例えば、メール作成・添削、仕様書の要約、社内ナレッジ・FAQの検索といった多くのユーザーが日常的に行っている業務に生成AIを活用することで、作業時間短縮と作業品質を向上できると考えました。
冨所様:営業部門を例に挙げると、提案範囲や提案内容のばらつきがありました。これまで提案書を作成する場合は、自分自身の経験や周囲のアドバイス、インターネット上の情報を参考にしていました。生成AIを活用することで新たな視点でインサイトを得られ、魅力的な提案に繋げられると考えました。

ー 生成AIソリューションの選定において、重視したことはありますか?
市川様:生成AI導入プロジェクトでは、「全ての社員が生成AIを利用できる環境の構築」をテーマとして掲げました。環境構築で終わりではなく、積極的に活用してもらうことが目的ですので、次の3点を重要な選定基準としました。
<生成AIソリューションの選定基準>
- はじめてでも利用しやすい
- 社内ナレッジを活用できる
- 安全な環境で利用できる
選定基準を設けた上で、Alli LLM App Marketの他に、ChatGPTのようなテキスト対話型のソリューションも含め、3つの製品を比較検討しました。全社利用を目指していましたので、評価のためのトライアルでは、”初心者でも利用しやすい仕掛け” があるかを重点的に確認しました。
生成AIの全社活用には、初心者でも使いやすく、安心して社内情報を活用できる環境が不可欠
ー Alli LLM App Marketをお選びいただいたポイントをお教えください。
伊沢様:機能や仕様に加え、実際の製品トライアルを通して、Alli LLM App Marketであれば期待した導入効果が得られると考え、採用を決めました。
ポイント1)高い活用性と導入障壁の低さ
Alli LLM App Marketはプロンプト入力が不要なアプリケーション形式で、初心者にも使いやすく、100種類を超える即利用可能なアプリが用意されており、幅広い活用が期待できること。
ポイント2)柔軟なカスタマイズ性
ノーコードのアプリビルダー機能で、社内ニーズに合わせたアプリ開発が可能であること。プリセットされたアプリをカスタマイズして、さまざまな用途のアプリを作成可能。
ポイント3)RAG機能による社内情報の活用
RAGが標準実装されており、セキュリティを確保しつつ、社内情報を積極的に活用できること。
ポイント4)安心できるセキュリティと充実したサポート体制
LLMへの再学習が防止されていること、導入支援対応や技術的なサポート体制が充実しており、安心して利用できること。

小野寺様:比較した製品は、アプリの利用者が自分自身でプロンプトを入力し、利用する仕組みでした。プロンプトのテンプレートを用意することもできましたが、テンプレートの変数部分を自分で編集して利用することになるので、初心者には利用のハードルが高いと判断しました。
冨所様:自社の業務に合った生成AIアプリを作成できることも大きな魅力でした。要約のようなシンプルなアプリだけでなく、フローチャート形式で凝ったアプリを作れる点も評価しました。
利用者目線の推進施策が成功。若手からベテランまで、多くの社員が日常的に生成AIを活用するように!
ー Alli LLM App Marketの全社展開にあたり、工夫したことはありますか?
市川様:全社展開にあたり、利用ルールを設定しました。著作権の侵害には注意する、個人情報は入れない、ハルシネーションに注意するといった、生成AIならではの利用ルールを定めています。そして、全社員を対象に、利用ルールの周知徹底はもちろん、利用方法や活用例などを盛り込んだセミナーを実施しました。
伊沢様:全社展開後、社内アンケートやAlli LLM App Marketのログデータをもとに定期的に利用状況の分析を行っていたのですが、積極的に利用しているユーザーがいる一方、継続利用に至らないユーザーが多数存在することが判明しました。自身の業務でどう使っていいのかわからない、業務的にPCを利用する頻度が少ないなど、さまざまな要因が明らかになりました。そこで、具体的な利用イメージをつかんで当初の目標である「全社員による生成AIの活用」を実現するため、次のような利用促進施策を実施しました。
<全社的な活用推進施策>
施策1)日常業務に直結した、実践的なハンズオン研修
施策2)積極的に利用しているユーザーへのインタビューと社内報での共有
ハンズオン研修では、Excel関数作成アプリ、メール作成アプリ、要約作成アプリなど、部署問わず日常業務に直結している生成AIアプリを用い、実践的な研修を実施しました。この研修で、生成AIとの付き合い方を掴んでもらうことができ、アクティブユーザー数が1.5倍に増加しました。
小野寺様:効果的に活用している社員にインタビューを行い、「生成AIを活用している業務」「活用している生成AIアプリ」「業務での活用方法」についてヒアリングし、活用事例として社内報で全社員に共有しました。一例をご紹介します。


「案件の仕様書要約アプリ」「ISMS/PMSヒアリングシート回答アプリ」など、自社特化型アプリで属人化を解消
ー 年代や役職問わず利用されており、全社活用が進んでいることがわかります。活用業務や導入効果について、いくつか具体的にお教えいただけますか?
市川様:当社は情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)や個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の認証取得事業者であるため、取引先様から関連するチェックシートの回答依頼を受けることがあります。この対応を生成AIでサポートするため、「ISMS/PMSヒアリングシート回答生成アプリ」を作成しました。
取引先によってチェックシートの書式が異なり、回答項目も異なります。回答には知識や経験を要するため属人化しており、「どのように回答したらいいか」といった質問が多数寄せられていましたが、このアプリのおかげで質問が減り、担当者側の対応時間の短縮にも繋がっています。
伊沢様:他にも当社ならではのアプリとして、「自治体案件の仕様書要約アプリ」も作成して運用をしています。仕様や要件に関する資料が100ページを超える場合もあり、このアプリを活用して概要を把握してから詳細を確認しています。
小野寺様:「メール下書き作成アプリ」「メール文面チェックアプリ」は広く日常業務で活用されており、社外だけでなく、社内メールを送る場面でも頻繁に利用されています。社内メールにおいては、”TPOに合わせた言い回しで社内関係者にメールを送りたい”、”社内であっても相手に失礼のない言い回しがしたい”といったニーズが多くあります。ベテラン社員などは、”役職者らしい表現がしたい”といった目的もあるようです。
冨所様:私はシステム開発も担当しており、いわゆる“PCに詳しい人”として、周囲からExcelの使い方などについて相談を受けることがよくあります。こうしたPC操作に関する質問は、これまでは“詳しい人に聞いて解決する”という形で対応されることが多く、都度対応で済む一方で、社員自身のスキルとして定着しづらく、同様の質問が繰り返されるといった課題もありました。
Alli LLM App Marketの標準アプリには「Excel関数アプリ」など、PC関連の便利アプリが複数実装されており、社員が自ら情報を調べて解決できる環境が整ったことで、日常的な問い合わせが大幅に減少し、全体の生産性向上につながっています。同様に、IT領域に限らず、チャットボット形式で利用できる「社内FAQ」や、前述の社内文書をもとに自動回答するRAG技術を活用した「ISMS/PMSヒアリングシート回答生成アプリ」なども展開され、部門を問わず共通する問い合わせの削減や対応工数の削減が実現しています。
これらのツールを通じて、属人的な対応に頼らない業務スタイルが浸透しつつあり、全社的な知識の底上げと、本来業務に集中できる環境づくりが着実に進んでいると感じています。
小野寺様:特に若手社員にとって、AIであれば気軽に質問ができる点も良いようです。先輩が忙しい場合や性格的に先輩に声をかけづらい場合でも、疑問を解消しやすくなっています。

ー Allganizeの対応はいかがでしたか?
市川様:導入前の検討段階から、数々の質問に丁寧に対応いただきました。導入後も、カスタマーサクセスの河田さんには、迅速な対応と的確なアドバイスをいただき、大変助かっています。特にアプリ開発においては、技術的なサポートと提案をいただき、円滑なリリースを実現することができました。
生成AIによる効率化だけでなく、高度化に繋がる施策も多数計画中。AIエージェントなど最新技術も積極的に活用し、AI化を加速。
ー 今後の展望についてお教えください。
伊沢様:次のステップとして、全社的な活用促進施策を展開する予定です。プロンプト講座、生成AIのトレンド講座などの学習の機会や、アイディアソンによる新しい生成AIアプリ開発などを予定しており、活発な利活用による業務効率向上を目指します。
冨所様:営業支援システム(SFA)をもとにした相関分析ができるようなアプリを作成したいと考えています。数値データなど根拠のある情報をもとにディスカッションすることで、議論の精度が上がったり、新しい視点が生まれたりするため、誰でも同じようにデータ分析できる環境を作っていきたいと思います。
小野寺様:業務効率化だけでなく、創造性を高めるツールとしての活用も強化していきたいと考えています。ダイレクトメールの発送業務を例に挙げると、発送の仕方や資料の入れ方など、創意工夫することでより良い効果を上げることができます。
市川様:AIエージェントなどのAI技術の進化により、AIで対応できる範囲がさらに広がっていくと考えています。AIエージェントを活用した業務改善にも大きな期待を持っており、今後も新しい技術を積極的に取り入れ、効率化や自動化を推進し、AI化を加速させていきたいと考えています。
ー 貴重なお話をありがとうございました。
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