■導入事例■【トムス・エンタテインメント様】生成AIをキャラクター化し、誰もが楽しみながら業務効率化できる環境を実現
株式会社トムス・エンタテインメント様は、「感動体験を創造し続ける」というミッションのもと、幅広いフィールドでエンタテインメントを提供するセガサミーグループの中で、「アニメで世界をもっと元気に、カラフルにしたい」という志を掲げ、アニメーション制作を軸としたビジネスを展開するアニメーションの総合プロデュース企業です。
『ルパン三世』『それいけ!アンパンマン』『名探偵コナン』など、日本を代表する数多くのさまざまなジャンルのアニメを手がけ、日本アニメの礎を築き、アニメ文化の伝承・発展の一翼を担っていらっしゃいます。
トムス・エンタテインメント様は、ITによる業務効率化やDXにも積極的に取り組んでおられ、生成AI活用基盤としてAllganizeの生成AIアプリプラットフォーム「Alli LLM App Market」を導入いただいております。
今回は、生成AI活用プロジェクトを推進するコーポレート本部 総務部 総務課長 杉山様、同 総務課 上原様にお話を伺いました。
ー 貴社の事業内容と皆様の役割についてお教えください。
杉山様:弊社は、クリエイティブとビジネス・プロデュースの両立により、IP(知的財産)創出からお客様満足度の向上まで、「アニメーション制作事業」「映像ライセンスビジネス」「マーチャンダイジングビジネス」を軸に、ワンストップで推進する総合力を有しています。
また、『ルパン三世』『それいけ!アンパンマン』『名探偵コナン』に代表される国民的アニメ作品の継続的な制作と、累計470作品・エピソード数13,000話を超えるライブラリーをグローバル・ビジネスへとつなげています。
また、IP(版権)をお預かりし、お取引様とお互いに成長しながらビジネス展開もしています。アニメのほかに、トムスラボというWeb漫画の部署や、原作となる自社IPに取り組む部署もあります。
上原様:その中で総務部は、社員の働きやすい環境づくりにフォーカスした取り組みを行っています。社内サービスとしての役割を担う側面もあり、今回のような生成AI活用だけでなく、お弁当サービス、映像勉強会、謝恩パーティなどの事務局を担当することもあります。
社内情報の管理や検索性の改善をきっかけに、会社として生成AI活用の検討を開始。
ー AI活用をご検討された経緯をお教えください。
上原様:コーポレート部門が抱えていた課題を解決するために検討しました。一つは、社内対応の改善です。私たち総務部をはじめ、バックオフィス部門においては、社内からのお問い合わせが日々寄せられます。原因は社内資料の検索性です。部署の統合や再編などの影響もあり、社内ポータルサイトに置いてある資料のバージョンが古かったり、社内ポータルサイトのメニュー構成が意図せず複雑になってしまっており、問い合わせが寄せられるのも無理がない状況でした。社内からの問い合わせに対応するたびにやるべき仕事が止まってしまうため、何とかしたいと考えていました。
杉山様:また、総務部内の情報の検索にも課題がありました。メンバーの入れ替わりなどにより、フォルダ内の個人ファイルが乱立していたり、情報が属人化してしまっています。総務部としても、欲しいデータをすぐに見つけられる状態にすることが求められていました。
上原様:チャットボットが有効だと知り、FAQ応答タイプのチャットボットを試してみたところ、FAQへの情報追加や更新などのメンテナンスが大変で運用が難しい印象がありました。検討し始めた当時はChatGPTが話題になっていた頃で、ChatGPTのようにAIが対応してくれるソリューションがないかと考え、展示会で情報収集していた時にAllganize社のブースで「ドキュメントから回答自動生成」を見て、まさにこれだと感じました。
杉山様:会社としてAI活用の機運が高まっていたことも挙げられます。ChatGPTの登場を受けて、経営層の間でもChatGPTの可能性が話題になり、「これからはAIを活用できない会社は乗り遅れていく」と考え、AI活用に積極的に取り組む流れがありました。AIを活用するならば、チャットボットだけではなく、企画作成やメール作成など、色々な業務に適用できるものが望ましいと考えていました。
検索性の高さ、回答生成のプロンプトをカスタマイズできる柔軟性、コストパフォーマンスなどを評価。
ー どのように活用するソリューションを選定されたのでしょうか?
杉山様:AIを活用するからには費用対効果も重要だと考え、慎重に検討を進め、最終的にAllganizeのソリューションも含めて3社を具体的に比較しました。
上原様:まず、比較表を作成して機能差などを可視化しました。4つの点でAllganize社に優位性がありました。
- 検索性の高さ
自然言語で検索ができるため、キーワードが一致していなくても求めるドキュメントに辿り着くことが可能。(例えば、「子供が熱を出したから休みたい」という質問に対し、育児休業に関する規程を提示してくれる)また、回答の根拠となったページがダイレクトにプレビュー表示され、さらにハイライト表示されるのはAllganize社だけだった。何百ページもあるファイルでも、すぐに資料を確認できる。 - LLMモデルやプロンプトを自社で設定できる柔軟性
プロンプトやLLMが固定されているツールも多い中、Alli LLM App Marketはユーザー自身で、アプリごとにLLMのモデルの選択やプロンプトの編集が可能。回答生成内容をコントロールできる。 - ファイルの容量
他社が10GB〜20GB程度であったのに対し、Alli LLM App Marketは100GBまで保存可能。 - 対応しているファイル形式
テキストファイル、WordやPDFのドキュメントだけでなく、PowerPoint、Excel、画像形式のファイルも対象。画像はAI-OCRで検索対象にできる点も高評価。
上原様:生成AIを使わないFAQ応答やドキュメント検索での運用も検討しましたが、Alli LLM App Marketの生成AI(RAG)を活用した回答自動生成の方が求める情報に辿りつきやすいことがわかり、Alli LLM App Marketで具体的に検証を進めました。
ー 費用対効果を重視されていらっしゃったと思いますが、どのように算出されたのでしょうか。
上原様:問い合わせ件数および対応時間をKPIとし、Alli LLM App Marketの導入により、どれだけ問い合わせ件数や対応時間を削減できるか算出しました。コーポレート本部では、1日あたり約60件のお問い合わせに対応しています。生成AIで自動応答することにより、問い合わせを受ける側だけでなく、問い合わせをする側にも削減効果があるため、双方の削減効果を加味して費用対効果を算出しました。
杉山様:費用対効果に加え、導入金額の面でもAlli LLM App Marketはコストパフォーマンスが高いと判断しています。利用する社員は約300人のため、ユーザー課金タイプの生成AIツールの場合は利用料が高額になります。Alli LLM App Marketはユーザー数問わず利用できるため、利用料を抑えることができる点も良いと考えました。
上原様:Alli LLM App Marketであれば、情報検索以外にもメール作成や企画検討など、幅広い業務を生成AIで効率化できます。また、生成AIアプリの利用者側はプロンプトを入力せずに利用できるので、スキル問わず誰でも利用できます。将来的にさまざまな業務削減効果を生み出せる点も評価しました。
回答生成のAIチャットボットに独自キャラクターを設定。抜群に親しみやすく、思わず話しかけたくなる環境を実現。
ー 回答自動生成のAIチャットボットに独自のキャラクター「エル」を設定されています。キャラクター設定の背景をお教えいただけますか?
上原様:私たちはアニメ制作会社ですから、AIチャットボットにもキャラクターが存在するのは当たり前だと考えています。アニメが好きな社員ばかりなので、キャラクターが対応してくれることで興味や親近感がわき、利用してくれると考えました。
杉山様:キャラクターが回答してくれると、質問する側もやさしい気持ちになりますよね。また、私たちならではの効果もあります。コーポレート部門はアニメ制作に関して間接的な関わりになっています。コーポレート部門もアニメ会社で働いていることを実感してもらい、改めてクリエイティブな会社で働いていることを感じてもらい、一体感を醸成することに繋がると考えています。
上原様:「エル」は単なるAIチャットボットのアイコンではなく、将来的にコーポレートキャラクターとして、最終的には会社の顔となるようなキャラクターに育てたいと考えています。将来像も含めて周囲を説得し、予算を確保して著名なイラストレーターに依頼して制作していただきました。エルのビジュアルは、会社のブランドカラーやロゴをモチーフにしたものが多数取り入れられています。
ー 口調などもこだわって設計されています。実際にキャラクターのエルを設定してみて、いかがでしたか?
上原様:キャラクターが答えてくれると、とても親しみやすくなります。質問に関する情報がない時や、求める情報が返ってこない時もありますが、エルが答えてくれると印象が全く異なります。
杉山様:AIにキャラクターのペルソナを設定することで、つい雑談したくなるくらい自然な会話ができます。社員の皆さんが生成AIに触れてくれるきっかけになるだけでなく、「エルに聞いてみよう」という感じで積極的に利用してくれるものになりました。
ー Allganizeの対応についていかがでしたか?
上原様:トライアル開始前から丁寧に対応してくれました。トライアルを始めた後は設定の仕方などを毎日のように対応してくれ、助かりましたし、嬉しかったです。AIチャットボットにエルの口調を反映するプロンプト設計などもサポートしてもらいました。
杉山様:チャットフローの組み方、プロンプトの設計も丁寧にサポートしてくれました。活用の土台づくりをしてくれたので、運用しやすい環境をつくることができました。さらに活用していきたいので、今後も一緒に取り組んでもらいたいと考えています。
生成AIによる業務効率化の範囲拡大と同時に、AIチャットボットのキャラクターを会社を代表する看板キャラクターに。
ー 今後の展望について教えてください。
上原様:生成AIアプリの活用を広げていきたいと考えています。フェーズ1として社内情報から回答するAIチャットボットからスタートし、まずはユーザーにAIという仕組みに慣れていただきます。フェーズ2では生成AIアプリを展開していきます。例えば、企画書の作成、採用面接の質問など、私たちにフィットする生成AIアプリがたくさんありますので、用途に応じたアプリ検証を総務にて行い、利用すべきと判断したタイミングでユーザーへと展開していきたいです。
杉山様:Alli LLM App Marketはカスタマイズ性が魅力です。データを限定でき、LLMやプロンプトも自由に変えられるので、個別タスクに特化した生成AIアプリを用意できます。その特性を活かして、管理者の視点で自分のボットを作ってみたいと考えています。管理職に聞かないと分からないことも多いため、総務部のメンバーから私宛の問い合わせもかなり多い状況です。過去の対応履歴情報をもとに、AIが一次受けをしてくれたらマネージャーとしての管理業務も楽になると考えています。
上原様:生成AIによる業務効率化はもちろん、当社ならではの取り組みとして、エルをはじめ、キャラクターを育てていけるようなAIチャットボットにしていきたいと考えています。私たちが制作するアニメは外部IPが大多数で、作品をお預かりして制作しています。自由に動かせるオリジナルIPを作り上げることで、会社の事業にも活かしていければと考えています。
ー 貴重なお話をどうもありがとうございました。
株式会社トムス・エンタテインメント様
https://www.tms-e.co.jp/