■導入事例■【DM三井製糖様】生成AIアプリを各部署が自主運用。”生成AIアンバサダー”制度で全社DXを加速。
「スプーン印」「ばら印」など日本で最も多く使われている砂糖を製造するDM三井製糖株式会社様は、「姿かたちを変えながら一生に寄り添い、幸せの時を広げる。」という企業理念のもと、事業活動を展開しています。多様な形態の砂糖製品の開発・製造・販売、また機能性食品の開発・製造・販売を主要事業として行い、「スプーン印」「ばら印」といった日々の生活に欠かせない砂糖や、それに関連する長年の知見や技術を用いながら安心・安全のブランドを展開しています。
近年ではデジタル化やDXに積極的に取り組み、全社的な生成AIプラットフォームとして、AllganizeのAlli LLM App Marketを導入いただいております。
今回は、生成AI活用の全社活用を取り進めておられる執行役員CDIO DX戦略担当 乾様、DX戦略部 新基幹システム推進課 荒尾様、DX戦略部 DX推進課 中瀬様の3名にお話を伺いました。
ー 皆様の部署についてお教えください。
乾様:DX戦略部は、経営および事業戦略を支えるDX・IT戦略、全社の情報システムに関する計画、導入・開発、運用保守、統制に係る業務を担い、デジタル利活用による業務効率化や高度化を目指し、様々な取り組みを行っています。生成AIを全社活用する取り組みは初めてとなるため「生成AI-CoE」という各種利用ノウハウやリスク要素を集中的に管理する企画・推進チームを立ち上げ導入を進めてきました。
ー 生成AI活用に取り組んだ背景をお聞かせください。
乾様:世界中の多くの企業で生成AIの利活用が進んでいます。当社も生成AI活用に取り組めば大幅な業務工数削減、生産性の向上が見込めるため、積極的に活用すべきだと考えていました。導入メリットとリスクを経営陣も正しく理解し、リスクコントロールをすることで利活用すべきと判断しました。
荒尾様:一方で、DX戦略部だけで生成AIの導入・開発・支援・教育まですべて担うのはリソース的にも厳しい状況もあります。また、各部門のデジタルリテラシーにはバラツキがあり、従業員の生成AIへの理解度にも大きな差があったため、導入にあたっては慎重に検討を重ねていました。
DM三井製糖株式会社 執行役員CDIO DX戦略部担当 乾 英一様
生成AI導入効果の最大化には、現場が自主的に運用できる生成AIプラットフォームが不可欠。
ー どのように、実際に導入するソリューションを選定していったのでしょうか?
中瀬様:現場でも生成AIに期待する声が強く、各部門の生成AIへのモチベーションが高い有志メンバーが展示会やセミナーなどで情報収集を進め、自社の状況に適した生成AIソリューションを探していました。
荒尾様:生成AIサービスの選定では、生成AIを活用したい若手社員を中心に9名が集まり、トライアルで実際に試して評価を行いました。メンバーの所属部署は、生産、品質保証、人事、経営企画、法務・コンプライアンスなど多岐にわたり、全社的に利用できそうか、さまざまな目線で検討を進めていきました。
ー 生成AIサービスの選定では、どのような点を重視したのでしょうか?
荒尾様:生成AI活用の基本構想として、「IT部門ではなくユーザーが自主的に運用できるか?」を最も重視しました。これまでIT部門では、現場からの要望をもとにシステムを開発しており、下請けという位置付けに近い存在でした。しかし、生成AIは全社で活用することで、会社として大きな成果を創出することが狙いとなります。そのため、これまでと異なるアプローチで取り組みたいと考えました。
中瀬様:現場が自主的に運用できることを大前提に、「各部門で導入した時のイメージがつきやすいか?」「セキュリティを担保できるか?」「UI・操作性はどうか?」といった観点でサービス評価を行いました。
荒尾様:最終的に2つのサービスに絞り、トライアルを通して全メンバーが点数をつけて比較検討したところ、Alli LLM App Marketが最も高い点数でした。特に高評価だった点は次のとおりです。
<Alli LLM App Marketを評価したポイント>
- 初心者でもすぐに使える豊富な生成AIアプリラインナップ
ITリテラシーを問わず、簡単に利用できるアプリが100個以上揃っており、誰でも活用できると考えました。 - 企業利用に最適なセキュリティ対策
Alli LLM App Marketは利用企業ごとに環境が分かれており、情報流出のリスクがケアされている仕組みです。また、RAGの対象ドキュメントもフォルダ管理ができ、閲覧権限設定も簡単にできるため、管理者としてもセキュリティを担保できると考えました。IPアドレスによるネットワーク制限ができ、個人スマホでの利用も防止できます。 - 生成AIアプリの利用ログなどを確認できる管理者画面
利用状況を確認できるダッシュボード、会話履歴一覧など、管理者が求める機能が標準実装されており、管理機能の追加開発が一切不要である点を評価しました。 - 利用開始までの環境構築が不要で、導入コストを大幅削減
Alli LLM App Marketは多数の生成AIアプリや管理機能が揃っており、すぐに利用を開始できます。導入までのコストや工数を大幅に削減できる点を評価しました。 - 柔軟なサポート体制
トライアル時から丁寧な操作レクチャーなど、当社の状況に応じた柔軟なサポートがあり、安心して導入できると考えました。 - 導入費用・ランニング費用ともに、高いコストパフォーマンス
Alli LLM App Marketは生成AIの業務活用に必要な基本機能が既に揃っており、導入費用30万円、月額30万円から利用できます。比較したもう一方の製品では、環境構築だけでも金額の桁が異なっており、コスト面でも問題なく導入できると判断しました。
乾様:他にも、過激な表現をブロックする機能(ガードレール機能)も、当社の運用ポリシーに合っていると感じています。性善説で運用しようと考えていましたが、管理画面で簡単に設定できたので助かりました。
DM三井製糖株式会社 DX戦略部 新基幹システム推進課 荒尾 祐輝様
ー 社内周知において、工夫したことはありますか?
荒尾様:Alli LLM App Marketの標準アプリの中から、自社では利用機会が少ないであろう一部のアプリだけ除外して社内展開しました。生成AIの利用にあたっては、利用の際に遵守すべき事項、注意すべき事項をまとめた「利用ガイドライン」を制定しています。最初の画面に重要遵守事項をシンプルに表示し、利用する度に必ず目に入るように工夫しました。
中瀬様:生成AIに馴染みのない社員も多かったので、「こうすれば自分の仕事が楽になる」とイメージしてもらうことが大事だと考えています。全社に対してオンライン配信にて、教育・操作説明会を実施し、「そもそも生成AIとは?」といった基本から丁寧にわかりやすく説明したうえで、実際の利用方法を紹介し、最後に社長から生成AI活用を促すメッセージを発信しました。ガイドラインを遵守した上で自由にAlli LLM App Marketを利用できるようにしており、複数回の全社説明会によって利用者がぐっと増えました。
経営陣の生成AI活用への期待と、DX戦略部のボトムアップ施策が両輪となり、全社活用が加速。
ー 目標どおり、全社的な生成AI活用を推進できた秘訣を教えていただけますか?
荒尾様:各部署から生成AIアンバサダーを任命し、部署ごとにAlli LLM App Marketを使った課題解決・業務効率化のテーマを選定しました。その後、テーマによって3つの分科会を設置して、部門を横断した協業体制も構築しています。
中瀬様:生成AIアンバサダーの選任においては、任命書をもとに各部署の部長に選任してもらいました。若手、ベテラン、役員まで、多様性のあるメンバー約15名で構成されています。アンバサダーがそれぞれの現場で生成AIを活用して実現したいことを検討するだけでなく、具体的な実現方法もセットで考えてもらいました。必要に応じてDX戦略部が伴走支援しながら、課題解決に役立つ生成AIアプリを各部署のAIアンバサダーが作成しています。
荒尾様:生成AIアンバサダーを中核として、具体的な生成AIアプリまで現場で考えてもらうことで、「自分たちで生成AIを使って試してみよう!」という機運を醸成していきました。
現場が業務アプリを自ら開発するのは初めての試みであり、DX戦略部としても大きなチャレンジでしたが、現場も積極的に取り組んでおり、良い流れができていると感じています。
乾様:生成AIアンバサダーが各部署で積極的に生成AIアプリについて説明する場面を目にするようになり、当初の想定以上に浸透していると感じています。経営陣の応援も当然ありましたが、上位下達で強制的に進めず、取組の自分ゴト化による社内の生成AI活用をリードしていくムードを作りながらスタートできたのが良かったと思います。
DM三井製糖株式会社 DX戦略部 DX推進課 中瀬 梨杏様
なくてはならないインフラの一つとして、生成AIアプリが多くの社員の業務をサポート。
ー どのような業務で生成AIアプリが利用されていますか?
荒尾様:最も多いのが、「LLMとチャット※アプリ」です。情報検索や、アイディア出しなどを生成AIで解決しています。壁打ちをして、アイディア整理ができるので、時間を有効活用できるようになっています。「音声から議事録作成アプリ」のニーズも高いです。
※LLMとチャットアプリ:生成AIと対話しながら、情報収集したり分析ができるアプリ
中瀬様:「ドキュメント要約アプリ」や「翻訳アプリ」も良く利用されています。ボリュームの多い業界誌や、砂糖業界特有のレポートなど、PDFを読み込ませて要点をまず確認してから、自分が読むべきか判断するといった使い方もされています。
荒尾様:自社で作成したオリジナルアプリでは、営業レポート作成アプリがあります。営業活動の手書きメモをAI-OCRでテキスト化し、レポーティングまで行うアプリです。
中瀬様:広報室では、SNSのレシピ投稿の表記揺れのチェックなどに活用しています。文章校正には時間を要するため、時間短縮に繋がっているそうです。
【参考】Alli LLM App Marketの生成AIアプリ「LLMとチャット」アプリのイメージ(DM三井製糖様のアプリ画面とは異なります)
ー 導入後、生成AIに関連する社内の変化はありましたか?
乾様:社内の20を超える部署で利用されており、ほぼすべての部署で活用されています。導入前は、生成AIに対して何となく後ろ向きだった社員もいましたが、一回使ってみると「凄い!」と実感してもらえます。評判が良く、インフラの一つになったと感じています。
荒尾様:作業時間の削減につながっている人が多いようです。例えば、メール文の作成では、相手がどう思うか、適切な表現かどうかを考える時間が長い人にとって、AIで検討することで時間削減効果が得られています。
中瀬様:時間短縮や効率化以外の効果もあります。若手社員からは、相談相手ができたという声も聞きます。先輩社員の時間を使わなくてもいい、ビジネスマナーなどを気軽に聞けるなど、頼もしい存在になっているようです。
荒尾様:各部署の業務特化アプリも、生成AIアンバサダーが開発して業務活用しています。Alli LLM App Marketの生成AIアプリの使い勝手の良さと、現場でのスピーディな対応により、定着が早かったと考えています。
ー Allganizeのサポートはいかがでしたか?
中瀬様:最初に驚いたのが、トライアルの段階から操作教育を丁寧に行っていただけたことです。評価選定の最中で右も左もわからないメンバーもいましたが、そういった悩みにも迅速かつ誠実に答えていただけました。
荒尾様:本番導入して約1年が経過しましたが、トライアル期間での印象そのままです。担当の足立さんも技術的な支援から細かい推進上の悩みまで、フレキシブルに対応をいただいており、感謝しています。特に助かったのが個別アプリの作成時です。生成AIの性質上、どうしても狙った結果が得られないこともあるのですが、Teamsのチャットを介して、個別事案でもクイックで的確なアドバイスをいただけたのは、推進上の課題解決に大いに役立ちました。
生成AIアプリの拡充やRPA連携で対応業務を拡大。AIドリブンの経営を目指し、企業競争力強化へ。
ー 今後の展望についてお聞かせください。
中瀬様:用途別の個別アプリを開発し、より多くの社員に役立つボトムアップ型の業務効率化を目指していきたいと思っています。また、まだ開発段階ではありますが、専用のチャットボットを開発して社内の問い合わせ工数を大幅削減していきたいと考えています。
荒尾様:RPAと連携し、大量の転記業務の自動化を企画している最中です。手作業の自動化により作業時間を大幅に削減し、高付加価値業務へリソースシフトを行い、結果として企業競争力強化につなげていければと思います。
乾様:AIエージェントなどの企業活用においては、データ品質が重要となります。DX戦略部では生成AI活用と並行して基幹システムのデータ品質の向上にも取り組んでいます。データを整備していきながら、プロセスマイニングを行い、データドリブンからAIドリブンにシフトしていきたいと考えています。